アテネのタイモン

高柴です


シェイクスピアの「アテネのタイモン」を読みました。

蜷川幸雄さんが演出をされていた彩の国シェイクスピアシリーズ。蜷川さんが亡くなり、吉田鋼太郎さんが後を継いでシェイクスピアシリーズは続けられることになりました。このアテネのタイモンは、吉田さん演出の記念すべき一作目となります。観劇に行くので、予習のため購入。


あらすじは、
アテネの貴族タイモンは、友人たちや商人、芸術家たちに惜しみなく財産を使っている。タイモンに献上すれば宝石も肖像画もタイモンを称える詩も途方もない値で買い取ってもらうことができると、商人たちは先を争うようにタイモンの屋敷にさまざまな品を持ち込む。
さらに友人たちからの「贈り物」にはなんであれ感激するタイモンは、贈られたものを何倍にもして返すということを繰り返し、毎日のように屋敷に友人たちを招いては過剰なほど盛大にもてなしていた。
アテネ中からタイモンの財産を食い荒らす人々が集まり、その危機的状況に目を向けようとしなかったタイモンだが、やがて無視できない現実に直面する。
タイモンは破産状態にあった。
忠実な執事の懇願を無視し、皮肉屋の哲学者の忠告を笑い飛ばしていたタイモンだったが、ようやく自分の財政状況を理解し、今まで助けてきた友人たちに今度は助けてもらおうと思いつく。これまでタイモンは友人たちに多くの財産を分け与えてきた。そのうちの少しを返してもらうだけで、タイモンは危機的状況を脱することができるのだ。
だが執事が危惧していたとおり、タイモンの「友人」たちの誰一人としてタイモンの頼みを聞くものはなく、タイモンは深い怒りと絶望にとりつかれる。

すべてを捨て、アテネ近郊の森にやってきたタイモンは、偶然土に埋まってきた金貨を掘り当てる。しかしアテネの人々への恨みと憎しみに満ちたタイモンの心が癒えることはなく、タイモンとは違う理由でアテネへの復讐に燃える武将アルシバイアディーズにその目的を果たせるようにと金貨を譲る。
かつてアテネのために命がけで戦ったにも関わらず、わずかな願いさえ聞き届けられなかったアルシバイアディーズはタイモンの金貨で軍勢を膨らませ、アテネに猛攻をしかける。あせった元老院議員たちはタイモンにアテネに戻ってアルシバイアディーズを止めてくれるよう頼むが、タイモンはきっぱりとそれを拒絶する。
こうしてタイモンとアルシバイアディーズの復讐は成し遂げられ、タイモンは怒りを抱いたまま永遠の眠りにつく。


みたいなお話。
とにかく読みにくかったです。松岡和子さんの訳で何作もシェイクスピアは読んでいるし、どれもすごく面白かったのになんでアテネのタイモンはこんなに読みにくいの?と思っていたら、答えは松岡さんのあとがきにありました。
なんと、「アテネのタイモン」は未完の可能性があるとのこと。構成が荒く、推敲も雑というのがその疑惑の根拠らしいのですが、めっちゃわかります。というかコレ絶対未完だろう。松岡さんが大変な苦労をされてわかりやすく訳してくださっているはずなのに頭に入りにくい。こんなの初めてで戸惑いましたが、あとがきを読んでなるほどなと思いました。
ストーリーが面白くないわけではなく、シェイクスピアお得意の言葉の掛け合いも楽しいのですが、ちょっとわかりにくいところが多かった印象です。
さて、これを吉田さんがどう完成させたのか……。なんでこんな難しい作品を最初に持ってきちゃったのかなぁとちらっと思ったりもしますが、おそらく最初にこれを持ってきたことには意味があるんでしょうし(吉田さんが主役をできる作品という理由以外に)シェイクスピアと蜷川さんのやり残したことをまとめて完成させる舞台だと考えるとわくわくします。そう考えると、吉田さんの世界を出しやすい舞台になるといえるかもしれませんね。
私のお目当ては執事のフレヴィアスを演じる横田栄司さんなので、忠実な執事の出番が多いことを祈るばかりです。