上流階級 富久丸百貨店外商部

高柴です


高殿円さんの「上流階級 富久丸百貨店外商部」を読みました。

上流階級 富久丸(ふくまる)百貨店外商部

上流階級 富久丸(ふくまる)百貨店外商部

百貨店の年商の約3割を担うのは、数少ない金持ち相手の外商だ。歴史ある富久丸百貨店の外商部で働く鮫島静緒は、芦屋川店外商部の紅一点。専門学校を出て地元でずっとお菓子を売っていたが、その「売り出す能力」を見込まれて富久丸百貨店に引き抜かれ、さまざまなプロジェクトを成功させて外商部へ異動となった。独特の世界に戸惑いながらも、静緒はバイヤーとしての実績を活かしながら外商に新しい風を吹き込んでいく……。



みたいな話。
外商という(残念ながら)馴染のない世界が楽しく、文章も先日読んだ「トッカン」に比べると格段に読みやすくなっていたと思います。
静緒の経歴も面白く、静緒と外商の組み合わせでより話に奥行きが出て読みごたえがありました。


ただ、なんというか「アレ?」と思うことも多かったですね。
第一章では桝家の実家は奈良の資産家だったはずなのに、第二章からは実家は京都になってる……のはもう別にいいです。京都に住んでる奈良の資産家だっているだろうし、養子に入った家と実家が京都と奈良なのかもしれないし。紛らわしいから統一しておいてほしいけど、一章と二章はページ数も離れてるから、うっかり説明しそこなったのかな?と納得できる。
一章の一番最初、「倉橋家には毎月の一日、決まった時間に訪問する」とあって、この一日は月初めの「ついたち」と読むのか、日は決まっていなくて月のうちの「いちにち」なのかと悩みました。でもすぐに、「倉橋家の嫁たちはなぜか一日には遠く離れたこの本家に顔を出す」とあったので、ああ、ついたちでいいんだなと納得。つまり、今は月の初めなわけね、と思っていたら、倉橋家から職場に静緒が戻ると今は月末ってことになってる。
え?違うの?ついたちじゃなかったの?
もう一度最初に戻って何度も読み返す→結局わからない。
もしかしたら倉橋家の嫁たちはものすごい能力があって、外商がいつくるか嗅ぎつけて毎月現れるのかもしれませんが読む方からするとちょっと不親切。
第三章で静緒が清家屋敷に訪問。奥様が「飾り付けた庭の写真を送ったら、娘と孫たちが来週泊まりにくるんですって」と発言した次のページで、長女&その娘、次女、三女(大学生)が勢ぞろい。
……来週泊まりに来る娘と孫って四女??三女まだ大学生なのに??
何十ページも離れていたら、作者の勘違いかなとか忘れてたのかなと思うんですが、次のページで前ページと矛盾する展開があるとちょっと居心地が悪いようなそんな気持ちになります。
しかしこれは担当した編集者も悪いでしょう。作者の意図がちゃんと読者に伝わるように気を配るべきです。こういうよくわからない、わかりにくいところはちゃんと指摘して引っ掛かりをなくす努力をするのが編集者の仕事だと思っていました。実際、他の本でこんなにどうでもいいことで引っ掛かりを感じたことはありません。ちょっと多すぎるように思います。