むすびつき

高柴です


畠中恵さんのしゃばけシリーズ最新作「むすびつき」を読みました。

むすびつき しゃばけシリーズ 17

むすびつき しゃばけシリーズ 17

今回のテーマは「生まれ変わり」で、短編が5作。

「昔会った人」
広徳寺の寛朝から呼び出された若だんなと妖たちは、高僧から付喪神になっている美しい玉「蒼玉」を見せられる。まだ片言しかしゃべることができないが、「若長」に会いたいと言う。それを聞き、貧乏神の金次がこの蒼玉を知っていると言い出し……。
金次が昔この蒼玉とともに出会った若長は、なんと若だんなが生まれ変わる前の人物。村を救うための旅をしていた若長は今の若だんなとよく似た優しい青年で、金次との約束が胸を打ちました。


「ひと月半」
またまた寝込んだ若だんなのために、兄やたちは箱根へ湯治に行く決断をした。置いていかれてひと月半、妖たちは暇を持て余して離れでゴロゴロしていたが、そこへとんでもない客が現れる。見たことのない3人の男たちは、それぞれ自分は死神だと名乗る。それだけでもとんでもないが、さらに自分こそは箱根で命を落とした若だんなの生まれ変わりだと言うのだ。こんな剣呑な客たちとやっかいごとになったら兄やたちが戻ったときに恐ろしいことになる。妖たちはそう悟って、なんとか自分たちで解決しようとするが……。
若だんなと兄やたちなしで妖たちが事件解決するお話。にぎやかで面白かったです。


「むすびつき」
金次が生まれ変わる前の若だんなに会ったことが羨ましい付喪神の鈴彦姫は、もしかすると自分も生まれ変わる前の若だんなと縁があったかもしれないと考える。一人だけ若だんなによく似た宮司を思い出し、その星ノ倉宮司がそうに違いないと思いつくが、確証があるわけではないと指摘される。そこで鈴彦姫は自分の本体である鈴が飾ってある五坂神社へ亡くなった星ノ倉宮司のことを調べにいくが……。
不審な死を遂げた星ノ倉宮司と消えた金の行方の謎解きが面白かったです。優しい鈴彦姫は好きなキャラなので、彼女の本体を見られて(?)よかったです。


「くわれる」
若だんなの許嫁於りんとともに離れへ乱入してきたのは、若だんなを「若さん」と慕う美しい悪鬼だった。もみじと名乗る悪鬼とその幼馴染の青刃の話を繋げると、もみじは三百年前に生まれ変わる前の若だんな(若さん)を好いていたらしく、添うなら若さんと決めていた。しかし、親から幼馴染の青刃と結婚するように命じられ、心配する青刃を連れて逃げてきたということらしい。たまたまその場にいた栄吉も於りんも、あまりに無茶苦茶な話にあきれるばかりで信じていないのは救いだったが、そこへさらに厄介ごとが起こる。なんと、悪鬼のもみじと於りんが何者かにさらわれてしまったのだ。人さらいはなぜか栄吉に栄吉の考えた菓子の作り方を寄こせと要求してくるが、若だんなたちは人さらいがもみじに食われないか心配で仕方ない。もみじたちの正体を隠し通しつつ、二人と人さらいを無事に助け出すことはできるのか?
なんせ人さらいが一番ピンチという状況なので緊迫感がない(笑)そこが面白いんですが、於りんちゃんも出てきて楽しい話でした。
しかし、栄吉さんはホントにどうするんだろう??こんなにゆるい感じで進むシリーズなのに、なぜ栄吉さんの餡子はマズイままなんだ……。適当に上達させて幸せにしてあげてくれませんかね?だめか、頑張れ栄吉さん!


「こわいものなし」
猫又のおしろに頼まれ、おしろの知り合いで猫又のダンゴの飼い主のために長崎屋が薬を用意することになった。ダンゴの飼い主の女性は薬のおかげで元気になったが、彼女の長屋の隣に住む夕助にダンゴが話しているのを聞かれてしまう。夕助はダンゴの話を聞き、人は転生できるらしいことを知る。薬を用意した長崎屋も妖と関わりがあると気づいた夕助は転生の話が事実か長崎屋に確かめに来るが、話して聞かせることが面倒になった兄やたちは広徳寺の寛朝に丸投げすることを思いつく。いつもの長崎屋の面々と夕助は一緒に広徳寺へ向かうが、なにやら広徳寺では不穏な騒ぎが起きていて……。
生まれ変わるなら、死ぬことが怖くない。つまり、死ぬのをビクビク怖がらずに好きなことができるとはしゃぐ夕助。今回は神社と寺の関係性もさらっと盛り込まれていて、読みごたえがありました。とりあえず夕助頑張れ。


いつも通りな感じで、安定感があって読みやすかったです。少しずつ時間が進むのもいいですね。次巻が楽しみです。