みをつくし料理帖〜天の梯

高柴です。


とうとう出ました。みをつくし料理帖最終巻「天の梯」
なお、それぞれのその後を描いた特別巻が出るようです。楽しみ。刊行まで時間がかかりそうな書き方でしたが……。待つわ。


最終巻を読み終え、私はすごく満足です。綺麗にまとまったと思います。やや出来すぎなところもあったけど、文句なしのハッピーエンド。
普通に号泣してしまって目が腫れてしまいました。


ネタバレなしで言えるのはこれくらいかな。
以下、それぞれの話のネタバレ。





第一話「結び草――葛尽くし」
季節は夏。
江戸は厳しい水不足に陥っていた。作物の出来が悪く、澪とつる家の新たな料理人政吉は献立に苦労していた。そんな中、元気に青々としている葛が澪の目にとまる。
翁屋が吉原に戻る日が決まり、澪がつる家を出る日が近づく。
一柳から柳吾と芳がやってきて、澪に一柳に来てほしいと伝えるが、澪は断る。料理人としてなにを目指すのか。澪は心を決めていた。
澪は翁屋に卸す鼈甲珠を作るだけでなく、持ち帰りのお菜を商えるような借家を見つけ、引っ越す。種市の頼みもあり、夜だけつる家を手伝うことになったのでつる家の人々と過ごす日々は続いている。
友人の美緒から新しく店を持てることになったと聞き、澪は喜ぶが美緒は新しい生活に苦戦しているようだった。そんな友のため、澪は葛を使った料理を作りたいと思いつく。


この話は坂村堂さんと清右衛門先生の願賭けにすべて持っていかれた感があります。なにあの二人、いつの間にこんなに愉快で可愛いキャラに?日を間違っていたオチに爆笑。長いシリーズでこの二人は本当に良いキャラに成長しましたねぇ。スピンオフで二人の愉快な日常みたいな話が読みたい。坂村堂さんが表向きは清右衛門先生を立てながらサラっと手の内で転がしているそんな日常が読みたい。
あ、酒粕で酔っぱらった源斉先生も可愛かった。だけど、私の笑いのツボを押さえたのは坂村堂さんと清右衛門先生です。ホント笑った。話の筋にはぜんっぜん関係ないけど。



第二話「張出大関――親父泣かせ」
澪はつる家を訪れた貧しい身なりの武士から弁当を依頼される。下級武士である徒組の武士たち十人分の弁当で、少ない予算内で少しでも喜んでもらおうと澪は工夫を凝らす。そんな澪を見て、政吉は料理人としての自分に自信を失くしてしまう。
夫の気持ちを察して心配する妻のお臼は、夫のある得意料理の話をする。その料理に興味を持った種市と澪はそれを口にして驚く。見た目は酷いがそれは素晴らしいものだった。さっそくつる家で出すことに決め、それは大評判になる。
一方、澪の弁当も江戸城でちょっとした話題になったらしく、源斉の母かず枝が澪を訪ねてくる。徒組の武士たちに渡した弁当と同じものが欲しいと懇願され、澪は快諾するが……。


陰に小松原さまがチラチラ。
源斉先生のお母さまがかっこよすぎてお母さまとお呼びしたい。
政吉とお臼夫妻がよかったです。もうすっかりつる家の一員ですね。



第三話「明日香風――心許り」
一柳の主、柳吾が危機に陥る。
将軍だけが口にできる御禁制の食べ物「酪」を無許可で作ったという疑いをかけられたのだ。疑いはすぐに晴れるかと思われたが、なかなか柳吾は解放されず、芳はもちろん、つる家の人々も心配する。
実は、この酪こそが芳の息子佐兵衛を破滅させた原因だった。澪は佐兵衛を裏切ったかつての天満一兆庵の奉公人富三からすべての顛末を聞き、絶望する。佐兵衛は覚悟を決め、一人で決着をつけに行く。
佐兵衛の自訴ですべてのことが明るみにでる。澪たちを苦しめた登竜楼はあっけなくお取りつぶしとなり、主の采女は逃走する。


小松原さまがとうとう…。
いろんな決着が一気についた話。佐兵衛を同じ料理人として助けた小松原さまには感謝しかありません。
源斉先生と澪。くっつかないならくっつけてしまえホトトギス的な種市とりうさんコンビが楽しかったです。まぁちょっとお待ちになって。先生は外堀埋めて今ちょうど石橋作ってるところだからさ。…長いよ!先生!読者はそれくらいの気持ちだよ。
酪というテーマも面白かったです。「醍醐味」の話を思い出しました。醍醐というのは牛の乳を精製したものらしいです。醍醐味ってヨーグルトみたいな味のことだったのか!と初めて知ったときは衝撃を受けました。
牛の乳を飲んだら牛になっちゃうんじゃ?って心配する澪がすごく可愛かった。そうか、牛乳って当時はそういう扱いだったのか。食べ物をめぐる歴史って面白いですね。




第四話「天の梯――恋し粟おこし」
あさひ太夫の身請けの日が急に早められることになった。あさひ太夫の客の一人である摂津屋からその話を聞き、澪はあせる。
どうすれば四千両もの大金をすぐに作ることができるのか。
澪は必死に考え、ある策を思いつく。
しかし、身請けするだけでは野江を本当の意味で自由にはできない。女の澪が身請けすると大変な騒ぎになるだろうし、野江はこの先ずっと澪に引け目を感じ続けることになる。
願うのは野江の本当の幸せ。
澪はさらに頭を悩ませる。
そんなある日、澪は美緒から源斉が苦しい立場に立っていることを聞く。



とうとう、とうとうこの日が来た。
澪の四千両の作り方はすごく説得力があって清右衛門先生が聞いたら愉快愉快と大笑いしそうなものでした。清右衛門先生も満足に違いない。
野江への深い思いやりにも感動しました。みをつくし献立帖の短編のエピソードがちらっと出ていて涙。
ほんとによかった。完璧。


以下、源斉先生についてネタバレの塊かつ先生への愛しかありません。



長かった。長かったよ。
1巻で心太にかける貴重な白い砂糖を持ってきてからというもの、鰻を貢いだり傘を忘れたり野江のお弁当役をちゃっかり引き受けたりホント源斉先生よく頑張ったよ!!あ、化け物稲荷の掃除も新たに追加されましたね。
すべては澪のために。
健気な先生の姿、ずっと見てたよ。
「この六年、澪さんだけを見てきたのです」
のセリフに号泣。おおげさじゃなくホントに号泣でした。
知ってるよ、私知ってるよ先生ー!!
大坂行きを勧めたときは、いったいどういう心境の変化!?と思ったんですが、自分も行くつもりなのを知って思わずニヤリ。澪に関しては意外とちゃっかりしている、そんな源斉先生が大好きです!!


最後になりましたが、澪の、名を残す料理人ではなくて料理を残す料理人になりたいという言葉に感動しました。それが澪が料理人としてたどり着いた答えなんですね。
このシリーズに出会って、読み続けてきて本当によかった。澪は読者の期待にも見事に応えてくれたのではないでしょうか。



高柴