みをつくし料理帖〜美雪晴れ

高柴です


みをつくしファンの皆さま、無事に新刊を入手できましたでしょうか?
私はもうめちゃくちゃ苦労しました。雪の影響で。なんとか今朝入手できてホッとしました。
今回は特別付録の瓦版で衝撃のお知らせが。
なんと、みをつくし次巻で完結。最終巻の「空の梯」8月刊行予定。
……ええええええええええええ!!!!!
と、本当に叫んでしまいました。
いやだってそろそろ終わりかなーと思ってましたけど、まさか次で終わりだとは。でも、惜しまれつつ終わるくらいのほうがいいのかもしれませんね。惜しいですが。ほんとにさみしいですが。
さ、では感想いきます。
今回はネタバレありのあらすじ→ネタバレだらけの感想の順で書きます。どんなネタバレも読みたくないという方はここまで。あと源斉先生が好きすぎて源斉先生の感想に熱が入っています。いつものことなので流してください。




神帰月――味わい焼き蒲鉾
一柳の柳吾から求婚された芳は、息子の佐兵衛の許しを得てからと返事をまだできずにいた。そんな佐兵衛の訪れを待つつる家の前に、佐兵衛が妻と娘を連れて現れる。佐兵衛一家を迎えて和やかなときを過ごすつる家。しかし澪は佐兵衛の妻から佐兵衛はこのままで良いのだろうかと悩みを打ち明けられる。
佐兵衛から祝福された芳はとうとう柳吾のもとへ嫁ぐことを決める。芳が一柳へ入ったあと人手が足りなくなるつる家へ、柳吾は自分の店で働いていた女性を紹介する。立派な体格の新しい奉公人お臼は明るく優しい人柄ですぐにつる家に馴染むが自分の夫のことを話したがらず、周りはそれを不審に思う。
澪は昆布のご隠居が口にした何気ない望みを叶えようと自作の蒲鉾作りに挑戦していたが、なかなかうまくいかない。失敗を繰り返していた澪に助言を与えたのは意外なことに源斉だった。
源斉の助言をヒントに澪は蒲鉾作りを成功させる。高価なために普段はめったに口にできない大きく切った蒲鉾に喜ぶ常連客たちの顔を見て澪は心から嬉しく思う。


源斉先生!!!澪が蒲鉾作りに苦戦してるのを聞いて蒲鉾屋さんでじーっと作り方を見てた先生を想像すると可愛すぎてニヤニヤしてしまう。澪から聞いたあと蒲鉾屋さんに行ったんだろうなぁ。だって最初から最後まで作業見すぎですもの!普通の人はそんなに蒲鉾作りを熱心に観察しませんって。しかも往診中に。カワイイ!意外とちゃっかりしてる先生にときめきすぎて胸が苦しい。
そんなわけで私的には今回のお話は源斉先生がさりげなーく詳しすぎる蒲鉾作りの助言を澪にする場面がメインでした。澪が素直でよかったね!普通なんでそんなに詳しいんだよ!ってつっこむとこだよ先生。
このタイミングでお臼さんという新キャラ登場には驚きました。まぁちゃんと理由があったんですが。昆布のご隠居は今回も良い味を出してましたね。あの人が出てくるだけでなんか気持ちが穏やかになります。佐兵衛さんも元気そうで今回はそういう古いキャラたちがたくさん出ていたのも嬉しかったです。


美雪晴れ――立春大吉もち
今年も師走朔日がやってきた。料理番付が売り出される日だが、もうそんなものに振り回されるのに懲りた種市は番付は買わないと宣言する。しかし、おりょうの夫、伊佐三が番付につる家が載っていると知らせてきて皆は驚く。つる家は見事関脇に返り咲いていた。
番付に載っていた料理は又次の供養のために三日精進のときに出した「面影膳」だった。番付を見てやってきた新しい客たちは当然面影膳をだせと騒ぐ。種市は悩んだ末、面影膳は三日精進のときにしか出さないと決める。お臼はせっかく新しい客が増えるチャンスなのにと残念がるが、奉公人たちは店主の気持ちを嬉しく思う。そんな彼らをみてお臼は目先の利益ではなくて料理を大事にし、お客を大事にするつる家の姿勢に感じ入る。
つる家にやってきた柳吾は面影膳を出さなかったつる家を誉め、澪がいなくなっても大丈夫だろうと語る。そして、澪に芳とともに一柳に来て自分のもとで修業をしないかと持ちかける。
澪は試行錯誤して作りだした自信作の鼈甲珠を使って大金を作り、野江の身請けをしようと考えていた。柳吾に鼈甲珠を持参し、自分にはどうしても成し遂げなければならぬことがあると訴えて一柳に入る話を断る。
芳とともに過ごす最後の正月、澪は芳とともに一柳で過ごすようにと誘われる。天満一兆庵以上の道具を持つ一柳に澪は圧倒されるが、板場での光景はそれ以上の衝撃を彼女に与えた。料理はまず目で味わうもの。それを極めた一柳の料理屋としての姿は澪の師である嘉兵衛の天満一兆庵と重なる。今、自分はそれとは程遠い場所にいる。わかっていたことだが、料理人として自分はどうありたいのかと澪は悩む。


好きな話です。つる家の揺るぎない姿勢と澪の料理人としての悩みが良かったです。嘉兵衛のような料理人になりたいと望むことも、おいしい料理をたくさんの人に食べてもらってみんなを幸せにしたいと思うのもどちらも正解で、だから澪は悩むのでしょうね。坂村堂さんがどんどん良いキャラになってきて彼が出てくるとわくわくします。なんか面白いこと言ってくれるんじゃないかって。どんな期待だ。
それにしても澪はいつの間にかすごい料理人になってたんですね。柳吾があそこまで言うなんて。よく頑張ったんだなって感動しました。まずい蕎麦を食べてた常連客じゃないですけど、私たちも澪が牡蠣を白味噌で土手鍋にして客から怒鳴られてたころからの付き合いですものね。


華燭――宝尽くし
種市に頼まれて柳吾が澪の後任のつる家の料理人を連れてくる。なんとその料理人は以前つる家に働きにくることが決まっていたのにそれを反故にされた政吉だった。驚くつる家の面々たち。しかしもっと驚いたことにお臼は政吉の女房だと判明する。なにかと難しい性格の政吉を操れるのはお臼だけで、そのお臼にまずつる家を見てもらい、彼女から説得してもらったと柳吾が説明し、政吉はつる家の新しい料理人となる。
柳吾と芳の祝宴の席に澪もなにか料理を作ってほしいと依頼され、澪はその料理を一生懸命考える。そしてその試作品を食べた種市にもつる家での芳を送る宴での料理を考えてほしいと頼まれ、澪は芳に希望を聞く。芳は思い出の蓮の実の粥を食べたいと言う。
一柳の祝宴で供する格式のある料理とつる家の祝宴で供する身体を健やかにする料理。自分がこれから作っていきたいのはどちらかと澪は道が二つにわかれたように感じて不安に思う。
一柳に芳が行く前日、つる家に泊まった佐兵衛は一人で鶴の剥き物を作っていた澪の指をみて、澪の代わりに包丁を持つと見事な鶴を作る。もう料理の道に戻らないと決めていると言う佐兵衛。しかし柳吾はそんな佐兵衛の中に料理人の姿を見ていた。柳吾は妻の芳と息子の坂村堂、澪に、いずれ一柳を誰かに継がせたいと口にする。その候補者の中には澪と、そして佐兵衛もいると。


佐兵衛さんの料理をする姿を見たいというのが夢だったのですが、少しだけ叶って感無量。これはもう、佐兵衛さんが料理の道に戻るっていうことなんでしょうかね。芳さん嬉しいだろうなぁ。一柳にふさわしいのはやっぱり佐兵衛さんだと思いますし。うまく進んでほしいです。
澪の料理にダメ出しする柳吾さんに安心しました。最近優しすぎてなんかイメージ崩れそうでしたから。厳しい師匠のような存在でいてほしいですね。ちゃんと坂村堂さんと仲直りできてよかった。坂村堂さんってばめちゃくちゃ柳吾さんの前でくつろいでてちょっと笑えます。あの人、意外と肝が太いタイプですよね。清右衛門先生もたまに負けてるし。
澪の道が本当に二つにわかれてるような気がして読んでるこっちも一緒に悩んでしまいましたが、料理っていろんな面があるよねと改めて奥の深さに気付かされました。
このお話は野江ちゃんが出てきたのも嬉しかったです。化け物稲荷の神狐と野江ちゃんの対面が叶うとは。一人きりでいる自分に似た神狐を見て野江ちゃんはなにを思ったのかなぁ。


ひと筋の道――昔ながら
清右衛門の助言に従い、鼈甲珠は吉原で売ることに決めていた澪は花見見物のときを狙って売り出すことにする。しかし、吉原の決まりを部外者の澪は知らず、初日は散々な目に合う。吉原のことを知る人物、翁屋伝右衛門を訪ねた澪は偶然居合わせた摂津屋にも助けられ、翁屋の軒先を弥生の間だけ借りる約束をとりつける。澪の狙いは当たり、鼈甲珠は好評を博してひと月で25両を稼ぐ。
弥生晦日、翁屋に挨拶に行った澪はまたもや居合わせた摂津屋の助言もあって翁屋に鼈甲珠を卸すことになる。道はまだ遠いが、野江を助けるために決して諦めないと澪は心に誓う。
そんな澪のもう一人の大切な友である美緒は大きな不幸に襲われていた。伊勢屋が奉公人の火の不始末から火事を出してしまったのだ。幸い家族に怪我はなかったが、財産をほぼ没収され居住地からの追放が命じられる。身重だった美緒は世話になっている坂村堂の家で女の子を産んだが、乳の出が悪くもらい乳をしていると坂村堂から聞き、澪は亡き母から聞いた食養生になる食べ物を作ろうと考える。
美緒のために料理を考えているうちに、澪はますます自分の進みたい道がわからなくなる。それを源斉に打ち明けた澪は、彼から思いがけない言葉を聞く。



源斉先生ー!!!
これは先生のこれまでの努力が報われる日が近いということですか!
これで次巻ほのぼので終わったら立ち直れないんであんまり過度な期待はしないほうが自分のためかもと思いつつ期待せずにはいられない。
もうおじいさんになるまでずーっとほのぼの片思い続ける気なんじゃないかとわりと本気で心配してたんで、めっちゃくちゃうれしい。澪に存在の大きさを気付いてもらえる日がくるとは!!まだそんなレベルかよとツッコミつつも大きな第一歩に拍手をおくりたい。
しかしまだ25両か…。あと一冊でどう話が展開するのか気になります。
それにしても澪が本当に強くなってて感動。やると決めたらやる子ですね。カッコイイ。まぁ鼈甲珠もってノコノコ吉原に乗り込んだときは、ギャー澪やめて!絶対無理だから無謀だから!!って心の中で叫んでしまいましたが。無謀というか素直というか。まっすぐすぎてたまにハラハラしますけど、やっぱりそんな澪が好きだな。



最後のおまけの短編に小松原さまがチラリ。嬉しいサービスでしたね。次巻のお楽しみってことらしいので、最後はまた登場があるみたいですね。……うん、源斉先生、大丈夫だよね?