天空の鷹〜風の市兵衛シリーズ〜

高柴です


辻堂魁さんの風の市兵衛シリーズ第5弾「天空の鷹」を読みました。

天空の鷹 風の市兵衛 (祥伝社文庫)

天空の鷹 風の市兵衛 (祥伝社文庫)

真ん中3つすっとばして5作目がオススメですと教えていただいたので、このシリーズを読むのは2作目。
幸いレギュラーキャラは1作目と変わらない(犬以外)ので、真ん中を読んでいなくても困りませんでした。
私にはどうしても文章を過剰に飾っているように思えて少し読みにくさを感じる辻堂作品ですが、1作目より読みやすかったと思います。
軽くあらすじ
市兵衛は偶然知り合った老侍に自分の祖父の面影をみる。その老侍中江半十郎はわけあって北相馬から7歳の孫娘を連れて江戸に出てきており、算盤のできる人物を探していた。
中江が気にかかる市兵衛は中江に雇われることを決める。中江はある帳簿を所持しており、市兵衛にその帳簿を読んで内容を教えてほしいと依頼する。帳簿は中江の息子が残したもので、北相馬藩中村家のめちゃくちゃな財政政策を示すものだった。実は中江の息子は中村家の財政面での大きな不正に気付いたために殺されていたのだ。
息子の死の真相を知りたいと願う中江を市兵衛は助けようとするが…。


みたいなかんじ。
手形とか両替云々のあたりは佐藤雅美さんの作品のほうが親切というかわかりやすいですね。佐藤さんは江戸の経済をテーマにたくさん書かれているので、きちんと納得したい方には佐藤さんがオススメ。
今回はキャラが良かったです。中江半十郎は渋くてカッコイイし孫娘の節は愛らしい。
市兵衛が中江を祖父と重ねるシーンは切なく温かく。損得ではなく情で中江と節を守りたいと思う市兵衛は本当に良い男だと思いました。
ストーリーは、ラストがちょっとだけ不満というか悪役側の処罰が甘かったのが残念。ラスボス(当主奥方)は無事だし。
市兵衛が両替商からお金を回収するあたりはスカッとしましたし、面白かったです。あと、聞き込みを重ねて少しずつ殺された中江の息子の人柄や真相がわかってくるという流れもよかったと思います。


今回も同心の渋井や目付のお兄さん(片岡)たちが出てくるんですが、なんかやっぱり中途半端。一応協力しあったりはするんですが、どちらも活躍らしい活躍シーンはないんですよね。それがちょっと残念だったかな。


このシリーズは良くも悪くも時代劇っぽい話だと思うんです。でもそれにしてはおとなしめな気がします。作者の荒唐無稽な話にしたくはないという誠実さは伝わりますが、私はむしろこのシリーズで荒唐無稽な話を読みたいなぁと期待してしまいます。完全に個人的な好みの話ですが。荒唐無稽って悪いばかりじゃないと思うんです。そんなわけで、もう少し勢いがあればいいのになぁとは思いますが、市兵衛と彼の周りの人々は爽やかで可愛いし話もハッピーエンドなので読みやすいシリーズだと思います。



高柴