ひなこまち

高柴です


畠中恵さんの「ひなこまち」を読みました。

ひなこまち しゃばけシリーズ 11

ひなこまち しゃばけシリーズ 11


良く言えば「いつも通り」、悪く言っても「いつも通り」なお話でした。
特に重要そうな新キャラとかも出なかったですし、これを読まないと次からワケがわからなくなるっていうかんじではないと思います。
いつも通り楽しめたのでファンの方は一読の価値ありかもしれません。
以下、あらすじと感想。



若だんなが「お願いです。助けてください」と書かれた木札と出会うところから物語はスタート。
誰が誰宛に書いたのかまったくわからないが、若だんなは気になり、できることなら助けてやりたいと思う。
そんな中、不思議なことに若だんなに助けを求める人や妖たちが次々に若だんなを訪ねてくる。
優しい若だんなは力になってやりたいと知恵を絞る。


「ろくでなしの船箪笥」
最初に若だんなに助けを求めにきたのは、小乃屋の七之助・冬吉兄弟。
二人は上方に祖父の見舞いに出かけていたが、祖父が亡くなり江戸に戻ってきていた。
祖父は亡くなる前に兄弟たちに形見として船箪笥を贈ると言い残していた。
しかし不思議なことに、祖父がなくなったとたん、船箪笥が開かなくなってしまう。七之助たちが船箪笥の中に何か高価なものを入れて持って帰ろうとしているのではないかと疑った伯父たちは、自分と関係のある江戸の店に船箪笥が開くまで預けることにするが…。


兄弟は開かなくなった不思議な船箪笥に妖たちが絡んでいるのではないかと疑って若だんなに協力を求めます。なんだかんだ言って仲良しになってますね。栄吉さんがあまり若だんなを訪ねてこられないので、新しい友達は若だんなにとってもうれしいことでしょう。兄弟のために張り切って謎を解こうとする若だんなが相変わらず優しくてホッコリします。


「ばくのふだ」
若だんなは、兄やたちや他の妖たちと落語の夜席へ評判の怪談話を聞きに行く。
しかし、話が佳境に入ったとき、突然客の武士が噺家に斬りかかり、せっかくの夜席はめちゃくちゃになってしまう。
若だんな最優先の兄やたちの働きで、当然若だんなに怪我はなかった。幸いなことにその場の人々は誰も怪我をしなかったと聞いて、若だんなはホッとする。
しかし、その直後から江戸中で異変が起こる。悪夢を見る人々が続出したのだ。しかも、起きているときにも怪異が続き、若だんなを心配した兄やたちは広徳寺の高僧寛朝に悪夢払いのお札を依頼する。すると、逆に寛朝から、若だんなに頼みごとがあると言われる。なんと、悪夢払いの「貘の札」に描かれた絵の中から貘がいなくなってしまったという。貘を捕まえるために協力してほしいと頼まれ、若だんなは妖たちを使って江戸中に罠を張る。



若だんなは、賑やかなのが好きなんですね。なんか可愛いなぁと思いました。でもホント若だんなのお嫁さんになる人ってどんなひとなんだろう
?ストーリーも面白かったと思います。貘がにくめないかんじのとぼけたキャラで楽しかったです。



「ひなこまち」
江戸はあるイベントで盛り上がっていた。そのイベントとは、江戸中の器量よしの娘の番付「雛小町番付」をつくるというものだ。番付に載れば良縁が舞い込むかもしれないとあって、美しい娘と彼女たちの親たちは大騒ぎ。
そんな中、屏風のぞきと仁吉は古着を売っている父娘と知り合う。江戸の娘たちは少しでも自分を綺麗に見せようとしたので、古着が飛ぶように売れていた。しかし、同時に古着屋が盗難にあう事件も増えていた。仁吉たちが知り合った父娘も古着を盗まれてしまい、なりゆきで二人は彼らを助けることになる。
一方、出かけたまま帰ってこない二人を心配した若だんなは、知り合いの妖に二人の行方を探してもらう。そして、仁吉たちの伝言を受け取った若だんなは、続いている古着の盗難事件の真相を推理する。



若だんなが木札を気にするのは「誰かに頼られているようで嬉しかったんじゃないか」と優しく推察する仁吉が素敵でした。
長崎屋の色男二人が大活躍。まぁ実際に解決したのは若だんななんですけど。仁吉と屏風のぞきコンビ、けっこう好きなんですよね。仲が悪くてやりとりが楽しい(笑)命の恩人の娘のために張り切る屏風のぞきが可愛かったです。



「さくらがり」
去年は“行けなかった”お花見に若だんなは妖たちと出かける。
行き先はなにかと融通の利く広徳寺。
そこに関東河童を率いる大親分禰々子が若だんなに会いに来る。先日若だんなが助けた西の河童の親分の代わりに礼に来たと言う。
禰々子は若だんなのために不思議な薬を持参していた。その中には惚れ薬もあり、それをたまたま聞きつけたある武士が、若だんなに惚れ薬を譲ってほしいと頼んできた。困惑する若だんなに、ちょっと変わったその武士は最愛の妻の気持ちを確かめたいのだと話す。しかしその惚れ薬は思わぬ騒動を引き起こして…



前々作の「ゆんでめて」の影響が全編を通してちらほら。禰々子さんも初対面ってことになってました。もちろん、あの賑やかだったお花見もなかったことになってるんですね。なんだか不思議な気分。
河童の秘薬が面白かったです。妖たちも楽しそうで明るいお話でしたが、最後の寛朝様の言葉がちょっと考えさせるかんじでしんみり終わった印象です。




「河童の秘薬」
花見で知り合った武士の愛妻が長崎屋を訪ねてくる。若だんなは悩みを抱える武士に幸せになる秘薬(ただし覚悟が必要。飲むなら人生をかける必要あり)を渡していた。結局、彼の妻はそれを飲んだ。しかし、彼女の身にはなにも起きず、困った末、若だんなを訪ねてきたという。
彼女は一人の迷子を連れており、若だんなたちはその子供をしかるべきところへ届けようとするが、なぜか邪魔が入る。
途方に暮れていると、獏がひょっこり現れる。なんと若だんなたちはいつのまにか夢の中へ入りこんでしまっていたのだ。
若だんなたちはこれは誰かに「試されている」のかもしれないと思う。そんな中、連れていた子供が何者かにさらわれる。
その子供を探すうち、若だんなはいろいろなことを知り、ある結論を出す。
若だんながずっと気にしていた木札の真相は?




面白かったです。これまでのお話で張られてきた伏線をきちんと回収して誰もが笑顔になるラストへ。
ちょっと甘いですが、こういう甘さがこのしゃばけシリーズの良いところだと思います。
あと、若だんなの成長が頼もしいです。誰かに助けてもらうんじゃなく、誰かを助けたい、頼られたいと切ないくらい真剣に願う若だんなはいい男になりましたね。若だんなはちゃんとすでにいろんな人の救いになってるんだよと、なんだか妙に彼に伝えたくなりました。






高柴