ルパン、最後の恋

高柴です


ルパン、最後の恋」を読みました。モーリス・ルブランの幻の遺作。

ルブランはこの作品をルパンシリーズの最終作として構想していたとみられています。しかし、ルブランはこの作品を仕上げる前に死去。彼の息子はこの作品が未完成で傑作とはいえないため公刊を望まなかったとか。今回、この作品が世に出たのはルブランの孫娘が出版を許可したためとのことですが、果たしてルブランはどう思ったでしょうか。
というのも、やはりこの作品は未完であるからです。
ルブランは何度も推敲を加えながら作品を仕上げていくタイプだったそうです。最初は簡潔でそっけないスタイルで書き、そこから文章を膨らませていたと訳者である平岡氏は述べておられます。
なるほど、確かにあまりに唐突であったり、意味がわかりにくいシーンが多々ありました。
簡単にあらすじ
レルヌ大公の一人娘コラは、ある日突然父が自殺したことで自分が大公の娘ではなくイギリス貴族の娘であったことを知る。周囲のコラに親身になってくれる人々はコラがイギリスの次期国王有力候補であるオックスフォード公の妻、つまり次期イギリス王妃となる筋書きを描く。しかし、そのせいでコラの周辺で不穏な動きが。そんななか、コラを全力で守る紳士がいた。彼こそはかの有名な怪盗紳士アルセーヌ・ルパン!!ルパンはコラを愛しながらも彼女の幸せを願って身をひこうとするが……。


かなり落ち着いた(自称40歳)ルパンが登場。平和主義者で、ボランティアに熱心になってました(笑)
なんだかなー。ナルシストなのは相変わらずでそこはいいんですが、妙にお金お金言うんですよ。しかもヒロインまでルパンにいくら持ってるのとか聞くし。そこがすごく違和感。なんとかのボランティアにこんなに使った、とか慈善事業のために稼がなければ、とかやたら言うのがナンダカナー。そりゃお金は大事ですよ。ルパンも自分のためにお金が欲しいんじゃなくて、慈善事業の為に必要なんです。それはわかってるんです。だけど、気障でナルシストで美女と冒険が大好きなルパンにわくわくした自分の少女時代を思うとちょっと苦笑いですね。あれかな、執筆当時ちょうどボランティアとか平和主義とかが流行っていたのかな?


オマケとして、ルパンシリーズの第1作「アルセーヌ・ルパンの逮捕」も入っています。これは、月刊誌に掲載された最初の作品を訳したもの。単行本にするときにルブランがかなり改訂を加えたそうです。改訂前の作品が日本語に訳されるのは初。オチは同じでしたけど、懐かしかったです。
あとは、ルブランのエッセイも付録としてついています。題は「アルセーヌ・ルパンとは何者か?」
コナン・ドイルを意識しまくっててちょっと笑いました。クリスティもかなり意識してますよね。ポワロがホームズを遠回しに馬鹿にしたりしてますし。やっぱりコナン・ドイルとホームズはすごいんだなとへそ曲がりの私なんかはニヤニヤしたりします。まぁそんな私はルパン派でクリスティ派なんですけどね。



高柴