心星ひとつ みをつくし料理帖シリーズ

高柴です



待ちに待ったこの本が出ました。

心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)

心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)

みをつくし料理帖第6巻「心星ひとつ」を読みました。前回小夜しぐれの感想
と同じくネタバレなしのざっくり感想→オチは明かさないけどネタバレ有りのあらすじ&簡単な感想→読んだ人限定読み終わった後の私の心の叫び(ネタバレの塊)の順で書いていきます。各自の判断で読んでいただければと思います。


ざっくり感想
裏表紙の説明文に「シリーズ史上もっとも大きな転機となる」とあったのですが、これは宣伝詐偽ではなかった…。これからもこのシリーズを読まれる方はこの巻は必読。そしてこの巻を読まれる方は前巻を読んでおいてください。
テーマは「幸せ」かなぁ。
満月を見てふきちゃんが
「あんな風にどこも欠けてない幸せがあれば良いのに」
と言うシーンがあるのですが、そんなものはないという厳しい現実に澪が直面します。
久々に澪が本気で苦しむのは見ていてつらかったですが、主役が完全に彼女に戻ってきたという印象を受けました。地味な女の子だけど、やはり澪が主役だと話に緊張感が出ますね。
今までとは雰囲気が違いますが、読者を飽きさせない良い工夫だと思います。続きが非常に気になります。


今回はレシピの他にも特別付録がありました。作者への質問コーナーみたいなものです。みをつくし料理帖は年2冊ペース。これ以上早くはできないそうです。あと、この先の展開も最終話も決まっているそうです。ドキドキ。
さて、以下あらすじネタバレ有り


第1話
青葉闇―しくじり生麩
食材は生麩。おいしいですよね。大好き!なんと作り方が書いてあったので、ぜひ作ってみたいと思います。不器用だけどおいしいものを食べたいという根性だけはあるのでできると思います。食い意地が張っているともいいますな。
季節は夏。
炎暑で青物の出来がイマイチなため、澪は乾物や豆腐、玉子など旬に関係なく手に入る食材をよく使って工夫をしていた。
そんなある日、坂村堂が父親の幼なじみという老人をつる家に連れてくる。老人の口から坂村堂は江戸の有名な料理屋の息子であることを聞き、みな驚きながらも納得する。
澪は大阪にいたころよく食べていた生麩が江戸にないことを残念に思い、自分で作ろうとするがうまくいかない。坂村堂に助言をもらい、なんとか完成させたがご寮さん以外の人々の感想は散々で、しかも幼なじみに連れられてやってきた坂村堂の父親柳吾を激怒させてしまう。
澪に深く突き刺さる柳吾の言葉とは。


この話好きです。珍しく澪が失敗しますが、そういうこともあって当然だと思います。柳吾は厳しすぎますが澪に甘い人が多い中、きちんと「現実」を突き付けられる数少ない人間だなと思いました。



第2話
天つ瑞風―賄い三方よし
食材は一応豆腐?この話は料理はあまり関係ありません。
季節は秋
つる家に大きな申し出が二つ舞い込む。
ひとつは翁屋の楼主伝右衛門からで、援助するので吉原で「天満一兆庵」を再建しないかという申し出、もうひとつは登龍楼からで、神田須田町の登龍楼をそっくりそのまま30両という破格値で譲るという申し出だった。
種市は澪に予算を気にせず好きな食材を使って料理を作り、料理人としての才能を伸ばしてほしいと望み、伝右衛門の申し出を受けるように、ご寮さんは澪が料理人として伸びていくためには種市のもとに居るべきだと考え、登龍楼の申し出を受けるようにと澪に伝える。澪のことを何より大切に思う二人の気持ちに澪は感謝する。
翁屋へ結論を伝えに行った際、澪は新造たちの計らいで野江と言葉を交わす。野江は昔と変わらず強く、優しく、澪を思ってくれていた。澪は野江のように強くありたいと願う。


野江ちゃん!!誰よりも彼女が好きです。しかし個人的には前巻のような登場のほうが好きです。実在するのかしないのかわからないくらいの儚い存在の彼女に惹かれるので。
このシリーズは恋より友情のほうが切ない気がするのは私だけでしょうか?
これを読んだときは裏表紙の説明文は詐偽だったなぁとのんきに思ってたんですがね…。



第3話
時ならぬ花―お手軽割籠
料理のテーマは冷めてもおいしいお弁当。
季節は秋。
つる家のある元飯田町でぼやが続き、町年寄から元飯田町の飲食店での火の扱いを午前中2時間に限られてしまう。一月ほどで許しが出るとはいえ、寒さを感じる時期に熱いものが出せないというのは深刻な事態だった。
不安は的中し、客足はどんどん遠退く。しかし澪は新たに「弁当」という案を考え付き、それは当たって飛ぶように売れる。
評判を聞いてやってきた柳吾に再び厳しい言葉を投げ掛けられるが、野江の言葉を胸に抱く澪はもう揺るがない。
そんなある日、先日少し縁があった武家の奥方らしき女性早帆が現れ、澪に料理を教えてほしいと頼む。なんとなく早帆に親しみを感じるつる家の人々は彼女の頼みを快諾する。
飾らぬ温かい人柄の早帆はみなに愛されたが、澪の料理指南も終わりが近づく。最後の料理指南の日、彼女は澪を連れ出し、ある場所に向かう。早帆の驚くべき決意と計画とは?


小野寺の猛獣その2こと早帆再登場〜!また出てくるとは思いませんでした。ある不幸が彼女を襲ったせいで小松原の話の時より勢いはなかったですが、また見られてうれしかったです。でも!でも!うぬぬぬぬ
余計なことを(ボソッ)



第4話
心星ひとつ―あたり苧環
料理は茶碗蒸しにあるものを入れたもの。関西の方ならわかるんじゃないかな?我が家では必ず入っています。なので、外で初めて茶碗蒸しを食べたときはアレが入ってないなんて変わってるなーさみしいなーとか思っていました。茶碗蒸しって本当はそういうものなんですね。
季節は深まりゆく秋
早帆の申し出に混乱する澪。さらにつる家に小野寺家から正式な使者が来てつる家の面々も事情を知る。
それぞれ苦しみながらも、澪の幸せを考え申し出は受諾される。澪は自分だけが幸せになることに戸惑うが、小松原こと数馬本人から想いを告げられ決意を固める。
早帆の何気ないひとこと、野江の蛤、清右衛門の失望、源斉の言葉…
澪の決して譲れない揺るぎないものとは?


ものすごくモヤモヤしました。澪が許せなくて、でも彼女が好きで幸せになってほしくて。モヤモヤモヤモヤ。



感想はここまで。
以下、ネタバレの塊というか読んだ人にしかわからない鬱陶しいだけの叫び。今までなんとか冷静でしたがもう我慢できないので騒ぎます。同じく叫んだ人のみどうぞ。尚、私は源斉先生と野江ちゃんを特に愛しています。









うわあああああああ!!
澪―――!野江ちゃんを助けるんじゃなかったのか―――!!清右衛門になりたいと初めて思ったよ!私も失望の眼差しを澪に投げたい。清右衛門先生でかした!
蛤を返す野江ちゃんが…
うう。一体野江ちゃんはどんな気持ちだったのか。お守りだと言っていた蛤を返す気丈さと弱さがとても彼女らしいですね。大好きです。
そして、源斉先生―――!!
切ない、切なすぎる。そして良い男すぎる!!
ああ源斉先生、もうこうなったら私をお嫁にもらってくれませんか?(どさくさ)
ちょっと澪!そこにお座りなさい!!アンタって子はなんでよくわからん男にばっかり目がいくの!おかしいでしょ?小松原と源斉先生が並んでたら普通源斉先生でしょー!目ぇ開いてんのか疑うわ。いや小松原も嫌いじゃないけどさ、源斉先生が好きすぎる。小松原は確かに料理のこととかでよく助けてくれるけど、本当に澪が苦しい時そばで支えて救ってくれるのは源斉先生じゃないですか。澪…残酷すぎるよ…。
傘を忘れる源斉先生にぐっときました。澪を避けることなく近寄ることもなく。どこまでいい人なの。彼の恋愛論と心星の話がすごくよかったです。ほとんど出番ないのに存在感がすごい。私の贔屓目100%ですが。
美緒もちょこっと登場。澪との友情が確かなものであったことに安心しました。いい子です。が!!美緒ちゃんちょっと黙っててくれるかな?と思ったのは私だけではないはず。確かに好きな人と結婚できたらいいと思うけど。でもタイミングが…。
あとご寮さんと種市の気持ちに胸が痛くなりました。
ご寮さんはぼちぼち佐兵衛さんと澪の夫婦計画をあきらめたほうがいいかとは思いますが。いや、私としてはアリなんですけどね。佐兵衛さん好きなので。でも源斉先生が大好きなので彼の望みをかなえてあげたいと思う読者心。佐兵衛・源斉・澪の三角関係だったらわくわくしたのにな〜。超個人的な好みですが。
佐兵衛さんは影も形もなかったですが、少しだけ柳吾から昔の様子が聞けてうれしかったです。早く彼に登場して料理を作ってほしい。佐兵衛と澪の料理人コンビを見たい。
種市は完全にお父さん。澪のために新しい料理人を見つけてくるなんて泣ける。
…ところでその料理人ってどうなるんでしょうね?次巻でちらっとでも出てくるんでしょうか?あの一柳の番頭のお墨付き。気になります。
新キャラ柳吾さんは言ってることは正しいけどいつも結論焦りすぎ。そして白黒はっきりつけすぎ。もっと正しいことと間違ってることの間のぼんやりしたところがあってもいいのでは?と思ってしまいます。


澪の揺れる気持ちがとても丁寧に書かれていましたね。あの早帆のささいなひとことから色んなものが見えるようになる流れが好きです。
でも断ってしまってこれからどうなるんでしょうね?こんなにも次が待ち遠しいのは初めてかもしれません。



ああ、取り乱してごめんなさい。でも今回は叫ばずにはいられませんでした。私こんなにみおつくし料理帖好きだったんだなぁ。
もし私と同様叫びたい方、いらっしゃいましたらコメント欄をご自由にお使いくださいませ。


コメントのお返事はコメント欄でさせていただいています。よろしくお願いします。


8月24日追記
みなさんのコメントを拝読して自分なりにいろいろ考えた結果、私がなぜ源斉先生にこだわるのかわかりました。
有名な韓国ドラマ「チ.ャ.ン.グ.ム.の.誓.い」のミ.ン・ジ.ョ.ン.ホ様と源斉先生が(私の中で)かぶるからです!!
うわーすっごくスッキリした!!みなさん本当にありがとうございます。



高柴