八十日間世界一周

高柴です



講談社版の世界名作全集というのをご存じの方はいらっしゃるでしょうか?
講談社が日本の子供たちのために世界中の名作たちを200冊近く集めたもので、ページ数も300ページくらいあるなかなか立派な本なのです。挿絵も美しいです。
私は子供のころ、このシリーズが大好きだったのですが10冊くらいしか読むことができず、巻末の名作集の題名を目で追いながらコレが読みたい!コレも読みたい!と、恋焦がれておりました。残念ながら叶わぬ恋だったわけですが。
なぜならこのシリーズ、およそ50年前のモノだからです。当然絶版です。もうねー、こんな素晴らしいシリーズを絶版にするとか日本の子供たちの権利侵害だと思います。出版社さんももう少し頑張ってほしいです。現在も子供向けの名作集が出版されてますけど、話の数が少ないですし、簡略化しすぎてペラペラです。もう少し重みがあっても子供はついてこられると思うのですが、やっぱり売れないんですかね〜。
私は幸い、父がせっせと子供のころに集めていたこのシリーズを少し譲ってもらえたので、10冊ほど読むことができました。父は半分以上集めていたのですが、親戚にあげてしまったらしく、それを聞いた幼かった私がその家の納屋に飛んで行きそうになったのは言うまでもありません。親にとめられなかったら本気で家捜ししてたかも(笑)
今、このブログを書くために手元に置いている「八十日間世界一周」は、定価200円、昭和35年発行とあります。あ、コレ初版本だな。時代を感じますね。紙は完全に茶色く変色していて、訳も堅いかんじなのですが、古さをはねのける生き生きとした文章が本当に楽しく、私はわくわくしながら読んだものです。
中でも特に好きだったのが三銃士とジュール・ヴェルヌ
そしてジュール・ヴェルヌの中で最もわくわくしたのが「八十日間世界一周」です。読んだのは小学生の頃ですから、もう20年近く前なのですが今でもハッキリ読んだときのことを覚えています。衝撃的な面白さでした。おそらくもう一生あんなに純粋にわくわくすることはないのではないかと思います。子供だったからこそ入り込めた世界だったのではないかと。


冷静でかつ勇気ある紳士フォッグ氏とおっちょこちょいだけど人のいいパスパルトゥーのコンビが最高でした。今さら説明は不要ですかね。イギリス人紳士フォッグ氏がロンドンの紳士クラブで他の紳士たちと「80日で世界一周は可能か」という賭けをする。掛け金は2万ポンド。フォッグ氏は雇ったばかりの執事パスパルトゥーと共に旅に出る。フォッグ氏の計算はほぼ完璧だったが、彼を銀行強盗だと勘違いした刑事が2人を追いまわし、旅を妨害したせいで1日遅れて帰国する。がっかりするパスパルトゥー。しかし彼らは東廻りをしたことによって生じた時差を見落としていた。そして最後は大逆転!


完璧な冒険ストーリーです。謎めいた美女を助けたり、未開の地やミステリアスなアジアの国を旅したり。なんと日本にも来ているのですよ。横浜が出てきます。面白いです。


当時の私は海外というものにとても憧れていたこともあって、豪快にお金をバンバン使いながら颯爽と旅をするフォッグ氏が本当にカッコよく見えました。
次はどんな冒険をするのだろうと思うとページをめくる手が止まらなくて、親に早く寝なさいと叱られてもう1章だけ、あと1章だけと何度も頼んだことを、この本を読み返すたびに思い出します。


今の子供たちがこういう素晴らしい作品たちと出会うことができないのは、本当に可哀想だと思います。今、電子書籍が話題ですが、将来コストがもっと下がったら、絶版になったこういうシリーズが手軽に読める日がくるかもしれませんね。私は完全に本は紙じゃないとっていうタイプですが、絶版の本が読めるなら電子書籍でもなんでもかまいません。そんな日がきてくれたらいいなぁ。



高柴