関所破り定次郎目籠のお練り

高柴です


佐藤雅美さんの八州廻り桑山十兵衛シリーズ「関所破り定次郎目籠のお練り」を読みました。

最近、八州廻り読んでないなと思っていたら、読むのを忘れていたようです。不覚!


八州廻りの岡っ引きのような役割を果たしている道案内二人が、ほぼ同時期に別々の場所で殺されるという事件が起こる。同時期だったのはただの偶然で、二つの事件に関連性はない。だが、身内のような道案内を殺されて犯人も捕まえられなければ八州廻りの権威が落ちる。十兵衛たち八州廻りは、すぐさま犯人を追った。
犯人はすぐにわかる。一人は定次郎という子分を二十人ばかりも抱えている大悪党で、そしてもう一人は泳ぎが達者で河童の六とか呼ばれている小悪党の六蔵だ。十兵衛は八州廻りの仕事をしつつ、この逃げた二人の悪党たちのことに気を付けていた。
何度もすんでのところまで追いつめるが逃げられるということを繰り返し、十兵衛はとうとう二人を捕らえる。


逃げている二人の悪党たちがいろんな事件にひょっこり顔を出して十兵衛とかかわりを持っていくのが面白かったです。定次郎と六蔵の悪党としての格の違い(?)もふふっと笑えました。
十兵衛に初めて自分の子供ができたのもなんだか感動しました。いろいろあったけど、幸せそうでよかったです。十兵衛は佐藤さんのシリーズものの主人公の中では珍しく腕がたつので、新鮮なかっこよさが味わえるところもこのシリーズの魅力だと思います。

怪盗桐山の藤兵衛の正体

高柴です


佐藤雅美さんの八州廻り桑山十兵衛シリーズ「怪盗桐山の藤兵衛の正体」を読みました。

やはり安定の面白さ。佐藤さんのシリーズ物は期待を裏切りません。


八州廻り桑山十兵衛は、偶然出会った河門笑軒という学者の老人が20年ほどまえに姿を消した盗賊の一味の頭目なのではないかという疑念を持つ。その一味はあちこちで押し込み強盗をしていたが人を傷つけるようなことはせず、その鮮やかな手口は人気さえあったらしい。桐山の藤兵衛と呼ばれていた頭目も一味も未だに誰一人捕まっておらず、ときが経つにつれて人々の話題にのぼることもなくなっていた。
しかし十兵衛が桐山の藤兵衛の正体が気になり始めてから、すでに老齢になっている一味の気配を感じるようになる。怪しい女や藤兵衛らしからぬ荒っぽい手口の押し込みの犯人を追いながら、十兵衛は少しずつ藤兵衛の正体に近づいていく。


7編の短編がゆるく繋がって、長編のような読みごたえがあります。久しぶりに佐藤作品を満喫できて、楽しかったです。

敵討ちか主殺しか

高柴です


佐藤雅美さんの物書同心居眠り紋蔵シリーズ「敵討ちか主殺しか」を読みました。

久しぶりに佐藤さんの作品を読んだ気がします。相変わらず面白い。
大店である廻船問屋伊勢徳の隠居徳兵衛さんが新登場。お大尽キャラなんで、なにかと話が早くて佐藤さんの作風に馴染みます。


紋蔵は相変わらず地味だけど良い仕事をして新たに町奉行に任命された壱岐守にも重宝される。仕事ができすぎて思わぬ恨みも買ったりするが、おおむね順調。一方養子の文吉は婿入りにどうしても納得できず、話を断る。
「棚から牡丹餅のような生き方がどうにも我慢ならないのです」
これはものすごく文吉らしいセリフというか、彼の性格をよく表していると思います。
8編ありますが、どれも面白く満足でした。特に、紋蔵に大恥をかかされてなんとか仕返しをしてやろうと奮闘する新キャラ火盗改の小野左大夫がコミカルな間抜けキャラで笑えました。こんなかっこ悪い火盗改のキャラがかつていただろうか。なんとなく火盗改ってすごくいい仕事なんだと思っていましたが、まさか貧乏くじ扱いされていたとは!お金かかる役職は大変だったんですね。響きはかっこいいけど。


さくさく話は進むし、江戸の様子がすごくよくわかるし、キャラはいいし、本当に佐藤さんの作品はオススメです。

遠縁の女

高柴です


青山文平さんの「遠縁の女」を読みました。

遠縁の女 (文春e-book)

遠縁の女 (文春e-book)

表題作「遠縁の女」の他「機織る武家」と「沼尻新田」の2編があり、短編集となっています。
青山さんらしく、人の心の動きを丁寧に追った作品です。


「機織る武家」は、わずか二十俵二人扶持の武井家に嫁入りした縫(ぬい)の物語。夫の由人は婿養子で武井家に入ったが、家付き娘の妻は出産で子供と共に亡くなり、肩身の狭い中で縫を嫁に迎えた。自分の居場所を確保するのに必死な由人に縫を思いやる余裕はなく、プライドの高い姑と中身が空っぽの夫との生活に耐える日々。夫はよく仕事でしくじることがあったが、ある日とうとう家禄を十俵にまで減らされる。一時は家を出て飯盛女になるしかないと覚悟を決めた縫だが、嫁入り前にしていた機織りで内職をすることになると一気にその才を開花させていく。しかし、縫には自分の名前が有名になることを恐れる理由があって……。


縫の心にずっと引っかかっていたある過去の出来事とようやく向き合うことができたとき、思いもよらぬ真実が現れる。一生懸命頑張る縫の姿が好ましく、どんな状況に置かれても冷静でどこか飄々としているところがよかったですし、縫の目を通して見る姑や夫も面白かったです。


「沼尻新田」は、知行取り五十四家のみに許可が下りた新田開発をめぐる物語。父から家督を譲られた柴山和巳は最初その新田開発には慎重だったが、実際にその土地に出向いてから考えを変える。表向きは、一族のため。しかし、和巳の本心はそこで出会ったある女性を守りたいというものだった。
和巳が出会った女性は、野方衆という昔藩から切り捨てられた人々だった。野方衆に対して労りの気持ちを持つ和巳は、たった一度言葉を交わしただけの娘と彼女の一族を守るために力を尽くす。


和巳が大変カッコイイです。冷静で周囲のことがちゃんと見えていて、それでたった一度会った女性に恋をして彼女のために自分ができることをやる。誰にも悟られずにやり通す和巳の姿にカッコイイと思わずにはいられません。隠居した父親もいい味出してます。


「遠縁の女」は、好きな剣術はイマイチ結果が出ず、あまり好きではない学問ではその力を周りに認められている青年隆明の物語。
自分の剣の力に限界を感じ始めた隆明は、突然父親から武者修行に出るようにと言われて驚く。時代は寛政の御代。すでに剣に重きをおく時代は過ぎ去っている。だが父に説得された隆明は、五年という長い修行に旅立った。
五年後、あと一歩で自分が納得できる結果を出せるというところで故郷から父が亡くなったという知らせを受け取る。慌てて戻った隆明は、五年前とはあまりに違う状況に驚く。彼が一目置いていた友人誠二郎は藩の改革の失敗の責任をとって切腹しており、その誠二郎の妻で隆明の遠縁でもあった信江は隣国にいるという。信江が気になる隆明は、会うのは一度だけと叔父に釘を刺されて彼女に会いに行く。だが、信江に「あれだけは赦せない」と責められた隆明は、心当たりのない「あれ」を知るために危険を承知で信江のもとへ通う。そうしてやっと信江の口から真実を聞かされた隆明は、ある決断を下す。


表題作だけあって、読みごたえがありました。信江、隆明、彼の父親と叔父、誠二郎の思惑や抱える事情が絡み合ってどうしようもない状況に追い込まれていく。読者に委ねる結末も含めて好きなお話です。



青山作品でひとつだけ気になるのは、読点の打ち方です。なんかやたら多い気がするのは私だけでしょうか。ないと読みにくいですが、多すぎてもスラスラ読みにくいような……。これも含めて作風だと言われると、そんなものかなとも思うんですけどね。

聖なる怠け者の冒険

高柴です


森見登美彦さんの「聖なる怠け者の冒険」を読みました。

安定感のある森見ワールド。ただ、有頂天家族などに比べると勢い不足ではあります。有頂天家族がすごすぎるというのも大きいですが。


あらすじは、
京都郊外で某化学企業の研究者として働く青年小和田くんは、平日は勤勉に働く真面目な社会人だ。しかし、だからこそ休みの日は思い切りグータラしたいという自然な(?)欲求を持っている。
そんな小和田くんの理想の休日を阻止せんと奮闘するのは、休日をすみずみまで味わい尽くすことを至上とする職場の先輩と京都で話題の怪人ぽんぽこ仮面。ぽんぽこ仮面とは旧制高校のマントに身を包み、タヌキのお面をつけて困っている人を助ける正義の味方。その怪しさ満点の外見により善良なる市民に通報されまくったという苦難のときを経てやっとその活動が周知され、今では誰からも愛される男だ。そのぽんぽこ仮面に小和田くんは跡継ぎとなるよう迫られていて、謎の怪人の要求から必死に逃れる日々が続いている。
小和田くんの週末が始まり、彼の周囲の動きも活発化する。しかし今回は不穏な影が見え隠れしており、どうやらぽんぽこ仮面が何者かに狙われているらしいということがわかる。必死に逃げるぽんぽこ仮面と彼を追う人々の大冒険が始まり、小和田くんは意地でもグータラする休日にしがみつく。
祇園祭宵山が始まり、幻想的な京都の夜が訪れる。ぽんぽこ仮面を狙う大きな敵の正体が徐々に明らかとなり、グータラ寝ていた小和田くんもなんとか大冒険に繰り出していくが……。


みたいな話。
ぽんぽこ仮面がひたすら頑張っていて、心から応援したくなります。
周りの人たちの冒険も楽しく、勢いはないけどいつも通りの楽しくにぎやかな世界。森見作品がお好きな方におすすめ。

あおなり道場始末

高柴です


葉室麟さんの「あおなり道場始末」を読みました。

あおなり道場始末

あおなり道場始末

コミカルな時代小説。葉室さんのギャグセンスが好きな私には楽しい一冊でした。
軽くあらすじ
青鳴権平は九州の小藩の城下町で道場を開いている。まだ20歳という若さで主となったが、とくに凄腕の持ち主というわけではなく単に父親が神社の石段から落ちて急死したために継いだにすぎない。
権平はぼんやりした温厚な性格で、稽古でも弟子にすぐに負けてしまう始末。そんな彼のもとにいつまでも門人が居つくはずもなく、父親の一周忌を迎えるころには弟子は一人も残っていなかった。
だが、彼には心強い味方がいる。勝ち気で剣の腕もたつ美貌の妹の千草と、ちょっと生意気だが秀才の弟の勘六だ。3きょうだいは仲が良く、兄を慕って協力し合って生活している。そんな彼らの日々は、とうとう食べる米が底をつき始めたところで大きく変わっていく。当面の生活費を稼ぐため道場破りを始めた3人は、父親の死の真相も探っていくが……。
権平が父親から受け継いだ奥義「神妙活殺」は無敵の剣だが、成功率は3回に1回。権平は大切なきょうだいを守り、父の死の真相にたどり着けるのか?


みたいなお話。
さくさく進んでいくので、ストレスなく読めます。きょうだいのキャラが絶妙で、みんないい子たちで微笑ましいです。
家族、きょうだいの絆が感動的で、読後もさわやか。軽い時代小説を読みたい人にオススメです。

応天の門

高柴です


大変面白いマンガを読んだので、ご紹介〜。私は元気です!

応天の門 1巻 (バンチコミックス)

応天の門 1巻 (バンチコミックス)

平安時代
藤原北家が権力争いの勝利の総仕上げとして、当主藤原良房の姪高子を今上の女御にしようとしていたころのお話。
昔、その高子と駆け落ち未遂をした宮中一のモテ男、在原業平は当然のごとく権力の中枢にいる藤原北家に嫌われ、もはや出世とは縁のなさそうな日々を送っている。
そんな業平が、ある事件をきっかけに文章生(学生)の菅原道真と出会う。年若い道真だがその博識ぶりは目を見張るものがあり、京を守る立場の権少将業平は道真の知識と知恵を借りてさまざまな京を揺るがす事件を解決していく。
最初は本を読む時間がなくなるのは嫌だと協力を渋っていた道真だが、書物では知りえないことを「知って」いくうちに、世間を見るようになる。しかし、業平と深く関わっていくうちに、道真はずっと拒んできた貴族の権力争いに巻き込まれていくのだった。


みたいな話。現在6巻まで。もう早く次が読みたくて仕方がない。
めっちゃ面白いです。道真が超可愛い超可愛い。業平もカッコイイし、二人の相棒感がたまりません。これはハマる。
事件モノ、時代モノ、相棒モノが好きな方には超オススメ。
とにかく道真が可愛くて、すっかりファンになりました。もとから菅原道真は好きですけど、今ではファンです。そんな漫画です(適当すぎる)
道真よりも業平の方が華やかじゃね?と、思う方もいらっしゃると思いますが、この漫画の主人公は間違いなく道真です。業平もいい味出してるけど、カッコイイし、面白いしモテるけど、でも道真最高!そういう漫画です。たぶん。