まるまるの毬

高柴です


西條奈加さんの「まるまるの毬」を読みました。

まるまるの毬 (講談社文庫)

まるまるの毬 (講談社文庫)

オススメしていただいて読んだ一冊。
面白かったです!!


五百石の旗本の家に生まれ、わけあってその身分を捨てて菓子職人となった治兵衛は、麹町の裏通りに小さな店を出して娘のお永と孫娘で看板娘のお君と穏やかな暮らしを楽しんでいる。店の名前は南星屋といい、治兵衛と仲の良い弟の石海が名付けてくれたものだ。兄の前では今でも菓子の大好きなやんちゃ坊主の顔をしているが、石海は大刹相典寺の住職という立派な身分である。
治兵衛は若いころ、全国を旅して各地に伝わる珍しい菓子をたくさん学んだ。そのおかげで南星屋にはいつもおいしくて目新しい菓子が並び、商売はいつも大繁盛。だが治兵衛は菓子をできるだけ多くの人に楽しんでほしいと菓子の値段を安く抑えており、もうけはそうあるわけではない。
そんな実直で誠実な人柄の治兵衛だが、実は彼には大きな秘密があった。ずっと隠してきたその秘密が、還暦を過ぎた治兵衛の周りに不穏な影を落とし始めて……。



みたいなお話で、短編集です。女性作家さんらしい、優しさと繊細さ、登場人物の心の動きの丁寧さは読んでいて心地よく、なにより描かれる深い愛情には感動しました。人が人を思いやるというのは本当に美しいものだと、改めてそう思わずにはいられませんでした。
派手さはなく、大爆笑!とか号泣!!みたいな忙しさもありません。ただ、丁寧に丁寧に書かれていて、ふふっと笑ってほろりと泣ける、そんな時代小説です。オススメしていただけてよかったです。


ところで、私は講談社文庫で買ったのですが、この表紙のお菓子はアレですよね。全国で呼び名が変わる楽しいお菓子ですよね。今川焼とか回転焼きとか。全国を旅した治兵衛のお話だからこのお菓子が選ばれたのでしょうか。そう考えると、ちょっと面白いなと思いました。