余寒の雪

高柴です



先日、時代小説ファンの方にお勧めしていただいた宇江佐真理さんの「余寒の雪」を読みました。

余寒の雪 (文春文庫)

余寒の雪 (文春文庫)

面白かったです!
短編集で、7つのお話があるのですがどれもよく話が練ってあって読み応えがありました。
江戸時代が舞台で、主人公は性別、年齢、立場が見事にバラバラ。ですから、それぞれ話の雰囲気が違っていて面白かったです。
どれも本当に面白かったですが、表題の「余寒の雪」、「あさきゆめみし」、「藤尾の局」が特に心に残りました。

ちょっとだけあらすじ。まずは「余寒の雪」
女剣士として生きていこうと考えていた知佐は、叔父夫婦に連れられて生まれ育った故郷の仙台を離れ、江戸に出てくる。江戸でいろいろな道場をまわり、自分の腕を試したいと期待に胸を膨らませていた彼女は、江戸に到着したとたん、自分は子持ちの同心と結婚することになっていると聞かされ猛反発する。
なんとか結婚は回避できたが、やむをえない事情が重なり、知佐は冬をその嫁ぎ先になるはずだった鶴見家で過ごすことになる。夫になるはずだった俵四郎の人柄や彼の息子である生意気盛りの松之丞とのたわいないやりとり、厳しいが優しい俵四郎の母の春江の姿勢は知佐を少しずつ変えていく。そうして冬が終わり春が来たとき、知佐が達した「境地」とは。


知佐と俵四郎のやりとりはあまり多くないのですが、二人の心の変化がよく理解できて爽やかなラストに納得できます。この季節にピッタリなお話でした。


次は「あさきゆめみし
真面目でこれといった道楽がなかった「つばめ屋」長男の正太郎が女浄瑠璃語りの竹本京駒に夢中になってしまう。周囲は呆れつつも、やめさせるほどのことでもないと放っていた。
正太郎には昔からの遊び仲間がいた。遊び仲間といっても、少しのんびりしたところのある正太郎はどちらかといえば馬鹿にされており、正太郎も積極的に彼らと親しく遊ぶことはなくなっていた。そんな彼らが、正太郎贔屓の京駒を見たいと言いだし、正太郎は彼らと女浄瑠璃を観にいく。しかし、なんとその中の一人で一番正太郎を馬鹿にしていた男が京駒と関係を持ったことがわかる。静かな怒りに燃える正太郎がとった行動とは?


正太郎がふっきれたというか、肝が据わってからの行動が爽快でした。やればできるんじゃないのと。ボーッとしているようで、実はシッカリしてたんだなと。昼行燈好きにはツボな作品でした。



カッコイイ女が出てくるのは「藤尾の局」
両替商「備前屋」の後妻であるお梅は昔、大奥に奉公にあがっておりそこでは「藤尾の局」と呼ばれる身だった。
お梅は備前屋清兵衛の前妻の馬鹿息子たちの狼藉や暴言にも顔色ひとつ変えず、見事にあしらっていたが彼女の娘のお利緒はそんな母親が歯がゆくて仕方がない。お梅が怒らないから兄たちはますます調子に乗るのだと。
そんな娘に、お梅は大奥で自分がやった「仕返し」の話をして聞かせる。彼女はその「仕返し」によって生じた結末を教え、自分が悔いていることを伝える。
しかし、その話は意外な効果を備前屋にもたらす。
藤尾の局の「仕返し」と備前屋の家族の再生の物語。


お梅さんがカッコイイ。
仕返しって、やったときはスカッとしますけど結局そのことを後悔したり嫌な思いをしたりしてまた自分に返ってきますよね。後悔するのはしんどいですが、後悔しない人間にはなりたくない。一番いいのは仕返しをしないことなんですが、そこはなかなか難しく(笑)
でもお梅さんが義理の息子にハッキリ言うところは本当にサッパリしました。こういう女性にしみじみ憧れますね〜。




高柴