赤ヘル1975

高柴です


重松清さんの「赤ヘル1975」を読みました。

赤ヘル1975 (講談社文庫)

赤ヘル1975 (講談社文庫)

1975年の広島の物語。
赤ヘルというのは赤いヘルメットのことで、赤をチームカラーとして赤いヘルメットをかぶる広島東洋カープのことを指します。今年カープは25年ぶりにリーグ優勝を果たしましたが、1975年は初優勝した年です。
カープ優勝に浮かれて読み始めた「赤ヘル1975」ですが、内容は思ったよりズッシリしていました。


1975年春、前年のシーズンも当たり前のように最下位だったカープは外国人監督を迎え、危なっかしいスタートを切っていた。
広島に生まれ育ち、これまた当たり前のようにカープを応援する少年ヤスは、丸刈り頭で中学に入学する。ヤスの父親はヤスがまだ幼いころに他界している。広島に落とされた原爆によって被爆し、何年もたってからその影響が出て亡くなってしまったのだ。だが、ヤスの父親だけではない。戦後30年の広島の街には、まだあまりにも多くの、そして深い戦争の爪痕が残されている。
そんな街へ、東京から転校生がやってくる。一発逆転を夢見て長続きしない仕事を繰り返す父親に振り回され続けている少年マナブは、小学校入学からこれで10度目の転校だ。転校のプロであるマナブだが、広島という街はこれまでとまったく違っていてやっかいだった。引っ越してきた日にたまたま出会ったヤスとユキオと同じクラスになり、マナブは同級生たちを通して広島という土地を知っていく。


みたいなお話。カープの戦いを追いながら、マナブの成長を見守るストーリー。マナブはどうしようもない父親のせいでめちゃくちゃ苦労しているのに、すごく素直で優しくて賢いところがけなげでした。ヤスは言葉遣いは悪いけど根はいい子で、熱狂的なカープファンであるユキオとともにマナブとの友情を不器用に築いていくところが本当によかった。そして避けて通れない原爆の苦しみも丁寧に描いてあって、1975年という年をとても近く感じました。
今の広島はとても美しく、街の人たちはやんわりしていてあと美人が多い(笑)幸せな現代の街ですが、こういうたくさんのことを飲み込んできた街なんだなと改めて考えさせられました。
そうそう、ユキオが一生懸命紙吹雪をまくシーンで、20年前の市民球場を思い出しました。個人的に、なんだか無性に懐かしくなった名シーンでした。