半席

高柴です 


青山文平さんの「半席」を読みました。

半席

半席

短編集なんですが、最初の「半席」を読んで「え?」と思った人もいたはず。青山さんの短編集「約定」の中に同じ話がありましたね。タイトルも同じ「半席」で。「半席」に出てきた片岡直人を主人公にしてシリーズ化したようです。この判断はイイと思います。片岡直人とその上司内藤雅之は短編ひとつで終わるにはあまりにもったいないキャラですし。
徒目付を務める片岡直人の目標は、徒目付という上にアピールできる仕事を踏み台にしてまずは勘定所に席を替え、御家人の支配勘定から旗本の勘定へ出世すること。片岡の家は御家人で、自分の代で永々御目見以上の旗本の家にすることは直人の悲願である。だが、上司の内藤から次々と持ち込まれる「裏の仕事」である頼まれ御用を通して直人は少しずつ考えを変えていく。
内藤が直人へ持ち込む話は、報酬重視の頼まれ御用ではない。このつかみどころのない飄々とした上司は、直人に「なぜ」の真実を解き明かす仕事を持ってくる。
誰かが誰かを手にかける。犯人はわかっているし、罪も認めている。ただ、なぜやったのか、を頑として口にしない。直人の仕事は、本当は誰かにすべてを打ち明けたいと願っているその犯人から真実を聞き出すことである。もちろん、普通に聞いて答えるわけはない。答えさせるために、直人は真実にできるだけ近い仮説をたて、それを相手にぶつける。それを呼び水にして答えを引き出すのだ。
それぞれの、重く、切なく、そして人間臭い思いを聞くうちに、直人は自分の人生、武士としての生き方を考え直すことになる。


みたいなお話。
片岡直人シリーズとして続いてほしいですね。直人の素直で爽やかなキャラがとても好ましいですし、食い意地が張っている上司の内藤がまた素晴らしい。時代小説ならではのキャラではないでしょうか。
どのお話も読みごたえがあって、楽しめました。時代小説好きにはかなりオススメです。