ヴェローナの二紳士

高柴です。


松岡和子さんの新訳でシェイクスピアの「ヴェローナの二紳士」を読みました。

ちくま文庫から今年の8月に出た新訳。ちくま文庫は名作の新訳を出してくれるから本当にありがたいです。モームちくま文庫のおかげでだいぶ揃ってきたし、ありがとうちくま文庫さん!!応援してます。
ヴェローナの二紳士の舞台を見に行くことになったので、予習をかねて読みました。ラム姉弟ヴェローナの二紳士は読んだことがあったので、あらすじは知っていたのですが、やはり台本形式で読むと新しい発見がありますね。
あらすじは、
ヴェローナの紳士ヴァレンタインは、自分の実力を試すためミラノ公国へ旅立とうとしていた。彼を見送るのは親友のプローティアスで、二人は別れを惜しみつつお互いの幸運を祈りあう。
プローティアスが親友のように外国へ行こうとしないのは、恋人のジュリアと離れるのが嫌だからだった。だが、息子の将来を案じる父親の命令で彼もミラノへ行くことになってしまう。プローティアスはジュリアと変わらぬ愛を誓い合って泣く泣くミラノへ旅立つ。
ミラノへ到着したプローティアスはさっそくヴァレンタインに再会するが、彼はミラノ大公の娘シルヴィアと相思相愛の仲になっていた。かつて恋に夢中になっていた自分を冷ややかにからかっていた親友の変わりようにプローティアスは驚くが、シルヴィアの美しさにたちまち彼も心を奪われてしまう。
ジュリアへの愛の誓いを捨て、親友への忠誠心も失ってしまったプローティアスは、ヴァレンタインがシルヴィアと駆落ちしようとしていることを卑怯にも大公へ密告する。シルヴィアを馬鹿だが財産と地位は申し分ない紳士シューリオと結婚させようとしていた大公はそれを聞いて激怒。すぐさまヴァレンタインをミラノから追放する。ミラノとヴェローナの間の森で盗賊たちに囲まれたヴァレンタインはなりゆきで盗賊たちを感心させ、彼らの頭領となる。
恋人を失ったシルヴィアは嘆き悲しみ、親友と恋人を裏切って自分に愛をささやくプローティアスに痛烈な拒絶を示していた。それでもシルヴィアを諦められないプローティアスは、あの手この手を使って彼女に取り入ろうとする。そこへ、プローティアスに会いたくて男装してミラノまでやってきたジュリアが現れる。恋人のプローティアスが夢中で高貴な令嬢シルヴィアに求愛しているのを目の当たりにしたジュリアは衝撃を受け、深く悲しむ。だが、正体を隠してプローティアスの従者となったジュリアは、主人に命じられてシルヴィアとの橋渡し役を演じることになってしまう。ジュリアは自分の境遇の悲惨さを嘆くが、恋敵のシルヴィアの優しさに心を慰められる。
そんななか、シルヴィアはヴァレンタインを追ってミラノから逃げることを決意。うまくいきそうに思えたが、森で盗賊たちに捕まってしまう。そこへシルヴィアを追ってきたプローティアスとジュリアが現れ、シルヴィアを助けて彼女を自分のものにしようとする。だが、一部始終を見ていたヴァレンタインの登場ですべてが露見。親友に一喝されてプローティアスは自分のしたことを心から悔い、ヴァレンタインに許しを求める。ヴァレンタインはプローティアスを許し、ジュリアの正体も明らかになってプローティアスは再び彼女に愛を誓う。


という筋。
ラストが絶対おかしいやろコレと評判の「ヴェローナの二紳士」ですが、うん、やっぱりおかしい。
どこがおかしいかと言うと、ヴァレンタインはプローティアスを許したついでに、なんならシルヴィアも譲るけど?って言っちゃうんですよねー。ないわー、私がシルヴィアだったらぶちキレてジュリアとミラノへ帰ります。
聡明でハッキリものを言うタイプのシルヴィアがラストまったく発言しないのもおかしい。そういえば、シルヴィアがプローティアスを痛烈に罵倒するシーンは非常に楽しかったです。その罵倒を喜ぶプローティアスはドMで間違いない。
でもね、このお話はそんな小さな(?)辻褄合わせなんてどーでもいいんです。勢いで楽しむお話です。登場人物のセリフはキレッキレ。おかしくて何度も爆笑したり、訳者の努力に感動したり。脚注がページの下にあるので、その都度脚注を見られて大変便利でした。
中野春夫氏の解説もとてもわかりやすくて面白かったです。このヴェローナの二紳士は、シェイクスピアが劇作家としてまだスタートラインに立っていたころ作ったお話。若いシェイクスピアが、この話で観客をドッと笑わせ、アッと言わせてみせるぞ!!と張り切って書いたんだろうなと想像するととても微笑ましくなりました。でもね、シェイクスピア、このお話で未来の観客はドッと笑ってエッ!?って口をポカンと開けることになるのだよ……。