御奉行の頭の火照り

高柴です


佐藤雅美さんの物書同心居眠り紋蔵シリーズ「御奉行の頭の火照り」の感想です。

文書の偽造及び判の不正使用の嫌疑がかかっている知り合いを助けたいから智恵を貸してほしいと、紋蔵は江戸の有名なお騒がせ男、蟋蟀小三郎に頼まれる。謀書謀印は重罪であり、その嫌疑がかかっている男は無実だった。紋蔵は小三郎が証拠を集める時間稼ぎができるように智恵を授ける。小三郎はなんとか知り合いの無実を証明し、事件は一件落着した。しかし、最初に謀書謀印を決めつけた御奉行はとんだ赤っ恥をかかされたと紋蔵を逆恨みする。紋蔵は上司でもある蜂屋から、気をつけるようにと忠告される。
奉行に睨まれていても、紋蔵は特に行動は変えずいつも通りの日々をおくる。
タチの悪い強請りをへこませるために知恵を絞り、人助けをしたせいで窮地に陥った武士を小三郎が見事に救うのを見守り、文吉の父庄助の最期を伝えに来てくれた島帰りの男をさりげなく助ける。引き取って育てている不幸な生い立ちの勘太の成長を喜び、文吉へ舞い込んだ思いがけない申し出に父親として頭を悩ませる。
小三郎はちょこちょこ紋蔵の前に姿を見せ、紋蔵は同僚や親戚に頼まれた問題に取り組む。



アレ??蟋蟀小三郎??
と、思った人。佐藤さんのファンですね!!そう、半次捕物控シリーズのお騒がせ男、蟋蟀小三郎がこっちに登場!!さすがしぶとい小三郎。とうとうシリーズを超えて出てきた…。なんか小三郎らしくて笑ってしまいました。紋蔵のことは半次から聞いたんですね。半次もゲストでいいから出てきてくれないかなぁ。もう会えないのはさみしいです。さすがの小三郎も、武士である紋蔵にはちょっと気を使っていたりしてそこも面白かったです。紋蔵も小三郎にはソフトに対応してたし。半次のぞんざいな小三郎の扱いも好きでしたが、紋蔵の穏やかさも新鮮でいいですね。良いキャラに成長した小三郎がいなくなるのがさみしかったのは、作者も一緒だったんですね。また会えてうれしいけど、紋蔵気をつけて。小三郎は見てる分には面白いけど、関わったら本当にややこしいからね!!
今回も安定の面白さ。いろんな罪があって、いろんな法律があったんだなぁと改めて驚きました。紋蔵が智恵をいろんな判例から引っ張り出すのが本当に面白いです。
今回一番驚いたのは小三郎ですが、文吉にも驚かされました。そうなるのかー。武士らしくなってきたと喜んでいたんですが、やはり彼には窮屈すぎたのかもしれませんね。ちょっと惜しい気もしますが、彼らしい身の振り方だったのかなと思います。
御奉行の顛末にくすりと笑いました。なるほどなー。ちょっと可哀想な気もしますが、納得のラスト。