解錠師

高柴です


ティーヴ・ハミルトンの「解錠師」を読みました。

解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

何年か前にすごく話題になっていた本です。
絶賛されていた本って、ものすごく期待して読んでガッカリ…というパターンが多いんですが、これは面白かった。すごくよかった。
あらすじは
8歳のときのある悲惨な経験から言葉を発することができなくなった少年マイクには、非凡な才能が2つもある。ひとつは絵を描くこと。そしてもうひとつは、どんな錠でも開けてしまえること。
マイクは高校で初めて「親友」を得て、楽しい日々を過ごしていた。だが、その親友のちょっとした思いつきで、彼の運命は変わる。マイクの錠を開ける才能は、誰にでも知られてよいというものではなかったのだ。だが、高校生というのは決して思慮深い年齢ではない。マイクは錠を開けるという特技を他の少年たちに利用され、ある悪ふざけに巻き込まれてしまう。
マイクは関わってはいけない人たちとの関わりを振りほどけないまま、ついには金庫破りとして活躍するようになる。彼が逃げられなかった理由は恋人のアメリア。彼女を守りたいという願いが、彼を犯罪者たちの仲間に引き込んでいく。だが、それでも彼はアメリアのもとへ帰りたいと望み…。


ちょっとしたことからマイクの運命の歯車が狂っていく。そこの説得力がものすごくよかった。ひとつひとつのエピソードが無駄ではなく、なにより、その運命の狂いさえもマイクにとって無駄ではなかったのがとても気持ちよかったです。読んでいるうちに読者はマイクを応援し、彼に愛情を持つようになるでしょう。だからこそ、ラストでものすごく感動します。
派手なトリックとか、推理とかそういうのはまったくないです。でも、すべてはラストのために書かれているのが読み終えた今、よくわかります。とても鮮やか。良い作品に出会えてうれしかったです。