英雄の書

高柴です


宮部みゆきさんの「英雄の書」を読みました。

英雄の書(上) (新潮文庫)

英雄の書(上) (新潮文庫)

子供が主役のファンタジーなんですが、子供向けではありません。
なぜならとても「理不尽」なお話だから。
主役の女の子と同じくらい読者も「どうして?どうして?」と悲しんだり憤ったり。それでもさすが宮部作品。物語にぐいぐい引き込まれて一気に読めました。文庫で上下巻なんですが、絶対一気に読むだろうと2冊同時に購入。宮部作品はいつもそうしてますが、今回もそうして正解でした。
簡単にストーリー紹介。


小学5年生の森崎友理子は突然事件を起こして姿を消した兄大樹を探すため、兄の所持していた不思議な赤い本の「声」に導かれて「無名の地」へ向かう。
兄は「英雄」という存在に惹かれ、憑かれてしまったという。優等生だった普通の中学生の兄がなぜそんなに「力」を欲していたのか友理子は疑問に思うが、兄のことを調べていくうちに知らなかった兄の一面を知る。それは同時に、友理子が思っていた通りの大樹の姿でもあった。友理子は必ず兄を連れ戻すと固く決意し、仲間たちと過酷な旅に出る。
しかし兄を探す友理子の協力者たちは、彼女が最後に知る「真実」を知っていた。それはあまりに彼女にとってはかなしい真実だった…。



これ以上は私が泣いてしまうので書けません。
友理子以上に私の方が絶望したかもしれません。友理子は普通の女の子なんですが、どんどんたくましくなっていくんです。だから最後の結末にも耐えられた。素直に彼女を尊敬します。
今回はファンタジーだったので、この世界観をキッチリ読者に伝えるため導入部分にかなりのページ数をさいています。友理子が旅を始めるまでがとにかく長い。いろいろ真相がわかったり話が動いたりするので飽きることはないんですが、せっかくファンタジーなのでもう少し異世界の冒険が長くても良かったかな?とは思いました。
なんども絶望だの理不尽だの暗い言葉を連発しましたが、ラストはすっごく感動しました。なんていうか、雲がさっと取り払われて青空が見えたような、あのラストは不意打ちすぎて号泣。
やっぱり宮部作品はすごいわ…と、しみじみ思いました。




高柴