たぶんねこ

高柴です


畠中恵さんのしゃばけシリーズ最新作「たぶんねこ」を読みました。

たぶんねこ しゃばけシリーズ 12

たぶんねこ しゃばけシリーズ 12

いつも通りのお話でした。
各話軽くあらすじ



「跡取り三人」
通町周辺の大店の商人たちに跡取りとしてお披露目された若旦那は、同じ立場の若者二人とある勝負をすることになる。その勝負とは、両国の盛り場で仕事を探し、自分一人の力で誰が一番お金を稼ぐことができるか?というもの。
若旦那たち三人の若者は、盛り場を仕切る大貞親分の家に居候して職を探すが、なかなかうまくいかない。特に体力のない若旦那は不利だったが、自分で商売を始めるという手を使ってなんとか他の二人と肩を並べる。
しかし、そもそも今回の「勝負」には不自然なことが多かった。若旦那は、ライバルの一人が不穏な事態に巻き込まれているのを見て、さらに確信を深める。そして、とうとう寝込む寸前まで体調が悪化した若旦那は勝負を諦め、気になっていたことを調べ始めるが……。


初めてお金を稼いでうれしそうな若旦那が可愛かったです。若旦那のみんなに愛される人柄は人としても商売人としても最高のものだと思います。でもきっと自分ではわかってないでしょうね〜。そんな若旦那が好きです。


「こいさがし」
若旦那の母、おたえの昔からの知り合いである14歳の娘於こんが行儀見習いのために長崎屋にやってくる。しかし於こんはもう嫁入りを考える歳なのになにひとつ満足にできず、教育係のおてつに叱られてばかり。
そんなある日、長崎屋に先日世話になった大貞親分の片腕富松がやってくる。富松は大貞の思いつきで縁組の世話をしなければならなくなったと話し、誰か適当な人を探してほしいと若旦那に頼む。困惑しつつも、兄や二人がなんとか釣り合いのとれそうな男女を探してくる。ほっとしたのもつかの間、今度は河童の大親分禰々子がやってきて、手下の妹の縁組に悩んでいるからなんとかしてくれと頼む。そこへ早くも花嫁修業にうんざりした於こんが口を出し、事態はひたすらややこしくなる。
結局、富松が仕切る縁組の見合いと禰々子の部下の妹の見合いを同時にやり、それを於こんが大人しく見物するという流れになるが、当然すんなりいくはずはなく、てんやわんやの騒ぎになる。


わりと好きなお話。ひたすら混乱しまくって最後はあっさりまとまるのが楽しかったです。



「くたびれ砂糖」
久しぶりに栄吉がやってくる。しかし若旦那に会いにきたわけではなく、砂糖を長崎屋で調達するために訪れたと説明する。
栄吉の働く安野屋では現在、主と番頭二人が伏せっており、店は慌ただしいという。さらに最近店で働き始めた3人の小僧たちが困った曲者揃い。生意気で菓子作りが下手な栄吉を馬鹿にする3人に振り回され、栄吉は疲れ切っていた。
栄吉が連れていた小僧もやはり生意気で、それが面白くない妖たちはなんと栄吉の行李に入って安野屋に行ってしまう。菓子が大好きな妖たちが菓子屋の安野屋でどんな騒ぎを起こすかと案じた若旦那は砂糖を届けるという名目で安野屋へ行く。そこで見舞いのために主の部屋を訪れた若旦那と仁吉は、主の薬になにかよからぬものが仕込まれていることを見抜く。


小僧たちがひたすら生意気でイライラ。でも若旦那と栄吉の変わらぬ友情にはほのぼの。



「みどりのたま」
記憶を失った男が自分は妖狐だと言う老人古松と出会う。なんと古松は男のことを知っており、ある頼みごとをしてくるが自分が何者かさえわかっていない男は困惑する。
古松の願いは神の庭に戻ることだったが、歳をとって病んでしまいもう戻れない。しかし古松の仲間たちは諦めずに古松の病を治す薬をさがしまわっているという。古松は仲間に薬探しを諦めるよう神の庭におわす神様に声をかけてほしいので、男に神の庭に行ってほしいと頼む。男はなりゆきで古松に協力することになるが……。


記憶を取り戻すきっかけにニヤリ。やっぱりそうか〜、ってなりました。
古松がいいキャラでけっこう好きなお話。


「たぶんねこ」
神の庭から見越しの入道が幽霊の月丸を連れて長崎屋にやってくる。その幽霊は先日知り合った古松とは逆で、神の庭から江戸に戻りたいと望んでいるという。入道は月丸が一人でこの江戸でやっていけるかを見極めるために自分が預かったのだと話す。しかし、そんな話をしているときにちょっとしたトラブルで若旦那は月丸とともに夜の江戸のどこかへ飛ばされてしまう。
月丸は若旦那に、入道のもとへすぐには帰りたくないと頼む。自分で一晩頑張って江戸で暮らせるか試してみたいのだと。月丸の願いを聞いた若旦那は自分も付き合うことにし、二人で江戸の町をさまよう。月丸は神の庭で化ける練習をしたのだと胸を張り、いろいろなものに化けるがすべて中途半端。実は、月丸は生きているときすべてが中途半端だったことが大きな悔いになっていて……。


いつのまにか大きな事件にも巻き込まれていて…という展開。月丸の哀しみと若旦那の大きな優しさが良かったです。ほんとに若旦那はいい男だなぁ。




こんなかんじでいつもどおりでしたが、今回はぐっとくる作品がなかったのが残念だったな〜。いつもはひとつはコレが面白かった!!とか、泣けた!!みたいなお話があるんですが。
とくに変化もなかったですし、静かな新刊だったな、というのが正直な感想です。




高柴