へこたれない人

高柴です


大好きな佐藤雅美さんの物書同心居眠り紋蔵シリーズ最新作「へこたれない人」の感想です。

今回もとても面白かったです。最近、ますます佐藤さんの作品が面白くなっている気がします。
以下、簡単にあらすじ。



紋蔵の長女、稲の夫が急死する。稲の夫の父蜂屋鉄五郎は、紋蔵が育てている文吉に亡くなった息子の跡を継ぐようにと言う。
困惑する文吉に、鉄五郎は淡々と将来は稲の娘千鶴を嫁に迎えてほしいと頼む。
なにもかもが突然の出来事だったが、とりあえず文吉は御家人の家を継ぐことになった。
そうして務めである挨拶まわりをしているうちに、文吉は二千石の旗本の内藤夢之助と知り合う。夢之助は醜男だったがおっとりした人を惹きつける人柄で、文吉は仲良くなる。
一方、紋蔵は次から次へと起こるやっかいごとをうまく処理しろという上司のいつもの丸投げに頭を悩ましていた。
岡場所の取りつぶしに張り切る老中をぎゃふんと言わせ、同僚の刑罰をほどほどのところへ落ち着かせる。あくどい名主をなんとか江戸から追放したかと思うと、理不尽な咎めを受けた浪人を助ける手助けをする。夢之助のために出した知恵がまわりまわっていろんな人を救う。
いつものように過去の判例を片っ端から調べて考え、なんとか智恵をひねり出す紋蔵を周囲はますます頼りにするのだった。


みたいなお話でした。
文吉の成長っぷりに読んでいて涙が出そうでした。あの文吉が、こんなに立派になって…。
今回も短編集で、すべて面白かったですが特に「帰ってきた都かへり」と「青菜に塩の冷汗三斗」がお気に入り。
長く続くシリーズですが、楽しい新キャラの登場や登場人物たちの成長に目が離せません。紋蔵がほんわかしているからか、このシリーズが一番ほんわかしている気がします。
おそらく、このシリーズが一番佐藤さんらしいというか、佐藤さんの良さがわかるんじゃないかと思います。過去の判例を調べつくす紋蔵と江戸時代の資料を調べつくす佐藤さんがかぶります。それにしても、佐藤さんって紋蔵を一作書くのにどれだけの判例を調べていらっしゃるのか…。江戸時代の法律も面白いですが、こうして江戸時代も現代と同じく過去の判例に頼っていたんだな〜とわかるのがすごく面白いです。
まだまだ続いてほしいシリーズです。



高柴