夢に見た娑婆〜縮尻鏡三郎シリーズ〜

高柴です


佐藤雅美さんの縮尻鏡三郎シリーズ「夢に見た娑婆」を読みました。

夢に見た娑婆 縮尻鏡三郎

夢に見た娑婆 縮尻鏡三郎

今回のゲストキャラは、商売上のトラブルで相手に傷を負わせてしまい、3年3ヵ月佃島の人足寄場送りにされていた鳥肉の仲買人新三郎。29歳妻子有りで、珍しくわりと普通の人(謎の多いゲストが多いですからね)だなぁと思っていたのですが、なかなかイイ男でお話も良かったです。
江戸での鳥肉の扱いってそうなってたんだなぁと、毎回のことですが知らないことばかりで楽しかったです。
ストーリーは、
寄場送りから戻ってきた新三郎が元の商売である鳥肉の仲買人に戻ろうとしたところ、鳥肉の問屋東国屋の主人からもう取引はできないと告げられ驚く。そもそも新三郎がトラブルに巻き込まれたのは東国屋のためだったこともあって、新三郎は納得がいかない。
しかし捨てる神あれば拾う神ありで、新三郎は知り合いのももんじ屋で、鏡三郎たちのいきつけでもあるくじら屋で働くことになる。
そんななか、なりゆきで浮気をしてしまった新三郎に愛想をつかした妻のみきが幼い息子を残して姿を消す。彼らが気になる鏡三郎は友人で臨時廻りの梶川にみきの行方を探ってくれるようにと依頼する。
最初はわけがわからなかった新三郎だが、自分がいない間に東国屋でなにかよからぬことが起こっているのではないかという疑いを持つようになる。しかし、何が起こっているのかも妻の行方もわからない。
新三郎の近くで起こる騒動や事件。それに関わる鏡三郎と友人たち。そして新三郎の「疑い」は意外な大事件をきっかけに事実が判明して…

みたいな話。
今回は、「鳥」と、鳥に関わる人々に焦点が当たっていました。鳥といえば、江戸時代には鷹匠がいたらしいですねぇくらいの知識しか持っていなかったので、鳥にこんなにも多くの人が関わっていたのかと驚きました。しかし江戸時代ってほんとキッチリしてますよね。たかが鳥、されど鳥ってかんじで、意外なほど細かいルールが決められていたそうです。
そういう豆知識を楽しみつつ読んだのですが、毎回どう転び、どう収まるのかわからないストーリー展開も面白かったです。ちゃんと本筋の「謎」が少しずつ明らかになるように話が練ってあり、相変わらず笑わせるエピソードもたくさん挟んであって何度も笑ってしまいました。
佐藤さんの作品の笑いはカラリとしていて大好きです。関西出身の作家さんですが、江戸っ子っぽいイメージです。文章もストーリーもキャラも笑いもスッキリしていて読んでいて気持ちがいいです。
ただ、いつも思うのですが佐藤さんの身近に気の強い女性がいらっしゃるのでしょうか。いつも気の強い女性の描写が妙に生き生きしているような気がするのです(笑)佐藤さんのエッセイとか読んでみたいですね。どんな方なのかなぁとよく思ったりします。
話が逸れましたが、いつも通りしっかり面白かったです。私にとって一番信頼できる作家さんです。


高柴