アルタンタハー 東方見聞録奇譚

高柴です


長崎尚志さんの「アルタンタハー 東方見聞録奇譚」を読みました。

アルタンタハー 東方見聞録奇譚

アルタンタハー 東方見聞録奇譚

長崎さんといえば、漫画原作者として有名です。浦沢さんとよく組んでいらっしゃいますよね。そんな長崎さんの「小説」ということで期待半分ひやかし半分で読んでみたのですが、面白かったです。
あの長崎さんの書いた話!!と、あまり期待しすぎるとちょっとガッカリするかもしれませんが、ストーリー展開はしっかりしていますし、十分楽しめました。話は2つあります。


まずひとつめのあらすじは
安東貞人は父が危篤だと知らされ病院へかけつける。意識が混濁している父親は戦時中の夢の中にいた。父親は戦後、ソ連兵に捕まり、モンゴルの収容所にいたつらい過去があったのだ。
そのとき、父の戦友だったという源田という男が現れる。
源田は貞人に、父親からある「財宝」の話を聞いていないかと尋ねる。何も知らない貞人は、父と父の戦友たちが収容所でモンゴル人の役人から教えられたという財宝の話を源田から聞き、興味を持つ。
自分の知らない父の姿を知るため、財宝の謎をとこうとする貞人は「源田」と名乗った男の得体のしれない不気味さにも直面することになるが…。


みたいな話。
一応、殺人事件もちょろっと出てくるんですが、そっちではなく、あくまで財宝の謎と父子の関係性がテーマ。私は謎解きよりも父と息子の話の方が興味深かったです。謎解きはわりとさくさく進んだので、読みやすかったと思います。
モンゴルにも収容所ってあったんですね。初めて知りました。身近にシベリアに4年抑留されていた人がいましたが、特に戦時中や抑留中の記憶に悩まされてはいませんでした。小説では戦争から帰ってきて悪夢にうなされて…みたいなパターンが多いですが、人によるんだなぁと思います。その人はしっかり生きてしっかり働いていましたから。ああでも、凍傷をものすごく怖がってましたね。雪の日に素手で遊んでいるとひどく叱られました。それが唯一シベリアにいたことを思い出させる言動でした。


さて、話がそれましたがもうひとつの話は
古書店の店主篠原は、外で人に会うことが体質的に耐えられない。しかしそれでもたまには外で人に会わなければいけなくなることもある。
古書を売りたいので見積もりをしてほしいと依頼され、篠原は重い腰をあげて依頼主の松田の家を訪ねる。
そしてそこで松田から、彼の家に代々伝わるある財宝の謎をといてほしいと頼まれる。篠原は松田を胡散臭く思いつつも財宝の謎には興味をもつ。
しかし篠原が謎を解く前に松田が行方不明になってしまい…


みたいな話。
こっちのほうが好きかも。謎と謎がうまくかみあっていて、読んでいて楽しかったです。篠原自身の抱えていた問題も一緒に解決してスッキリしました。
どちらも、テーマは謎解きと家族の再生。希望の持てるラストに作者の思いやりを感じました。
読後スッキリする作品だと思います。



高柴