一石二鳥の敵討ち〜半次捕物控〜

高柴です


佐藤雅美さんの「一石二鳥の敵討ち」半次捕物控を読みました。

一石二鳥の敵討ち 半次捕物控

一石二鳥の敵討ち 半次捕物控

目次を見て驚愕。最終話とありました。つまりこれで半次シリーズはおしまいってことですよね…。なにかのうっかりミスとか今回から第8話を最終話と表記するようになったとかじゃない限りは。もしそうでも私はいっこうにかまわないのですが。


最後なんだと思うと、泣きそうになりました。半次がこれからどうなるのか、私は知ることができないのですね。佐藤さんのシリーズの中で、一番思い入れのある主人公なのでさみしいです。でも、サラリと終わるところが半次らしく、同時に佐藤さんらしい気もします。きっとこれからも半次は彼らしく生きていくのでしょう。ここでおしまいというのは、そういうことなんだろうなと私は解釈することにします。
幸い、シリーズはけっこう続きましたし私も読みながら忘れていることも多そうなので、また最初から読んでみることにします。楽しみです。


そんなわけで、前置きが長くなりましたが半次シリーズ最終巻!最終巻という感慨を抜きにしてもとっても面白かったです。
今回は半次の子分達も出番が多くて、伝吉には良縁まで舞い込んできました。
個人的に面白かったのは第2話の王子稲荷結願の御利益かなぁとパラパラめくりながら考えてたんですが、やっぱりこっちも…いやいやこっちも…と結局決められず。本当にどれも面白かったです。ニヤリとする話が多かったですね。もちろんいつものいろんな江戸豆知識も楽しかったです。思わず「へぇ!!」と声を出してしまったのは「メッキ」が日本語だということ。銀メッキとか金メッキとかカタカナで書きますけど、れっきとした日本語なんですって。びっくりしました。


表題の第7話「一石二鳥の敵討ち」と最終話「日笠源之進、返り討ちの後始末」は続きもの。
これだけあらすじを書いておきます。最後ですからね。以下ネタバレ注意。



小三郎のところに道場破りの青年がやってくる。小三郎は相手になり、あっさり倒す。しかし青年日笠源之進は謝罪せず、むきになった小三郎は彼を道場に置いて毎日しごき倒すことにする。
なかなか見込みのある青年で、小三郎の稽古に耐えているうちにどんどん腕をあげる。そんなある日、道場に源之進を敵(かたき)とする武士が現れ、勝負をもちかける。源之進は受けてたち、武士を倒す。
武士は備中生坂池田丹波守家の剣術指南だった。源之進は丹波守家の下級武士だったが、ある名門の兄弟を斬って出奔していた。
その後、丹波守家の用人が家中の者を15、6人も引き連れて小三郎の道場へやってきたがあっさり小三郎にやられ、江戸中の笑い物になる。
備前岡山池田家は丹波守家の本家で、丹波守家は本家池田家に事態の収拾を考えてくれるよう泣きつく。
相談の結果、とりあえず江戸の人々の興味を小三郎と丹波守家の争いからそらせようということになった。そのために考えられたのが本来の目的であった敵討ちを大々的に宣伝して行うという案。そこで源之進を敵とする名門の一族が敵討ちで無事に源之進を討つことができるよう案が練られた。家族を江戸に呼んで源之進を説得させ、源之進がおとなしく負けるように工作したのだ。
源之進は兄と母に頼まれ、討たれることを承知する。
物見高い江戸ッ子たちが大注目する中、源之進は覚悟を決めて臨むが…。


みたいな話。半次も縁のある備前岡山池田家。最後の半次の提案にニヤリ。やっぱり頭いいなぁ半次。


半次が大好きだった私はずっと小三郎がキライで(笑)憎いとかむかつくとかそういう重い感情ではなく
コラ、小三郎!半次に厄介かけるんじゃない!!
みたいなわりと軽い感覚でキライだったわけですが、最初からなんだか憎めないキャラだっただけあって最後は、ちょっとイイ奴かも?と、錯覚しそうになるくらいには好感度が上がってました。なんかくやしい。小三郎なのに。


ああなんか、最終話だったんだなってじわじわ実感がわいてきて、どう言えばいいのかわからない。本当に終わっちゃうのかなぁ。何かの間違いならいいのに。私が初めて出会った佐藤作品であり、私が佐藤雅美さんに惚れこんだきっかけでもあるシリーズ。半次が好きで、手下たちも好きで、小三郎さえなんだか可愛い。いろんなことがあり、半次は悩んだり口惜しい思いをしたり喜んだりしながら、一度も読者をガッカリさせるようなことはしませんでした。別に正義の味方ってわけじゃなく、武芸に秀でているわけでもないけれど、いつだって筋を通す男。本物の江戸っ子であり、いい男だなと思います。





高柴