秋月記

高柴です


葉室麟さんの「秋月記」を読みました。

秋月記 (角川文庫)

秋月記 (角川文庫)

この前読んだ「いのちなりけり」よりもわかりやすく、読みやすかったです。
本藩対支藩という構図。


葉室さんの作品はいつもオジサンがかっこいいですね。そして女の人が愛らしいです。登場人物たちの爽やかな「可愛らしさ」に癒されます。


ストーリーは、
福岡藩支藩である秋月藩は、慢性的な財政危機のなか、なんとか本藩からの独立を維持していた。
そんな秋月藩を吸収してしまいたい福岡藩は、隙あらば秋月藩を乗っ取ろうと機会を狙っている。
幼いころ人一倍怖がりだった小四郎は、昔、妹を助けられなかったことを悔いている責任感が強く優しい青年である。
良き仲間たちとともに剣と学問に励み、彼らと切磋琢磨して成長した彼は、誰からも一目置かれる存在になっていた。
秋月藩では、家老の宮崎織部の独裁状態が続いていた。理想に燃える小四郎と仲間たちは、織部を家老の地位から追い落とす計画をたて、福岡藩の協力を得て目的を果たす。
しかし、それはすべて秋月藩を乗っ取ろうとする福岡藩の計画のうちだった。
そのことに気付いた小四郎たちは、必ず秋月藩の独立を守りぬくことを誓い合う。
月日が経ち、小四郎たちは、それぞれ藩の中でも重い地位にいた。そんななか、少しずつ彼らの気持ちに変化が。毎年続く財政難と金策に頭を悩ませ、疲れ切った仲間たちは、もう福岡藩の支配を受け入れてはどうかと思うようになっていた。
小四郎は、そんな仲間たちの心変わりを寂しく思うが、自分一人になっても絶対に秋月藩の独立を守る決意を固める。彼が選んだ道は過酷で孤独な道だったが、小四郎は、「逃げない」ことを誓う。


みたいな雰囲気。


小四郎と仲間たちの友情が泣かせます。
私も何度も、もういいじゃん、福岡藩に吸収されたほうが楽になるよ!と、思いました。だから仲間たちの気持ちはすごくよくわかるんです。でも、小四郎が絶対にそうしないという気持ちもよくわかります。そういう選択をしないから小四郎は小四郎なんです。
このお話は主人公の小四郎をじっくりと書いているので、彼を深く理解できたように思います。
周りの仲間たちもいい男ばかり。葉室さんの描く「男の友情」が大変好みです。
あと、一癖も二癖もあるオジサンたちも良かったです。
絶対的な「悪者」がいないんです。
それぞれ事情や想いがあって、それを貫こうとするから軋轢が生じている。ある意味、みんな善人でみんな自分勝手な悪人。
勧善懲悪のスカッとする話が好きですが、たまにはこういう話もいいですね。
大変面白く読みました。
以前の作品よりも文章も設定も読みやすくなっていて驚きました。が。やはり私は「銀漢の賦」が忘れられないですね。あの「痛快さ」をひぐらしは超えているのだろうか…。読みたいと思う反面、
嫌われていた藩の重鎮某は実は悪いやつじゃなかった
パターンも飽きてきたなぁと、贅沢なこともちらりと頭をよぎります。




高柴