銀漢の賦
高柴です
- 作者: 葉室麟
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/02/10
- メディア: 文庫
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先日直木賞のニュースを見て、この人の作品面白いかもなぁと。ただの勘だったわけですが、大当たりでした。
あらすじは
寛政期、ある小藩の家老松浦将監は、幼なじみの日下部源五と20年ぶりに言葉を交わす。実は二人は20年前から絶縁状態にあった。
将監は名家老の名をほしいままにしているいわば成功者だったが、源五はその要領の悪さもあってまったく出世とは縁のない人生をおくっている。
しかし今、将監は苦境に立たされていた。そして自らの寿命が残り僅かであることを知った将監は、最後に自分の命を使ってある大仕事を計画する。
そんな将監が気になる源五は、20年前に自分が絶縁状を叩きつけた経緯があるにもかかわらず、将監を助ける決意をする。
こうして50歳を越え、権力を失った将監と誰からも軽んじられているが意外と頭も腕も確かな源五は二人で鮮やかな博打を打つことになった。二人は、自分達の出会いや共通の友とその死、将監の父母が巻き込まれ、のちに将監も直面することになった藩内の権力争いの結末などを思い出しながら決行の日を待つ。
みたいな雰囲気。少しずつ明らかになる過去と現在の状況がよく練ってあってひきこまれました。
20年前の絶縁は源五の一方的なものでわしは知らん。だからひとつわしを助けろとあっけらかんと言い放つ将監と、抜かせ!なんでわしが!といいつつあっさり当たり前のように友のために命をかける源五のおじさんコンビがかっこよくてかっこよくて。20年も離れていたのにお互いへの理解と信頼が揺るがないところにぐっときました。
少しずつ明らかになる彼らの出会いからの藩全体の動きも将監と源五の作戦もドキドキして物語を通してずっと緊張感がありました。なんかずっとドキドキしっぱなしだったような気がします。けっこう重い話なのに源五がカラリとした性格なので暗くはならず、ときどきふふっと笑うこともありました。
本を読んで泣くときって、じわじわ泣くパターンと、ハッと口を手で押さえて涙がぽろっと流れるパターンがありますが、この作品はぽろっと涙が出るパターン。なんどもやられました。何度か出てくる漢詩がまた作風によく合っていて爽やかでした。漢詩っていいですね。
ストーリーはしっかりしてるし、時代物にありがちなねちっこさは皆無でカラッとしてるし、登場人物は泣かせる人からとぼけた人まで揃ってそれぞれ表情豊かだし、最高でした。
超好み!
久しぶりに直木賞に感謝しました。こんな素敵な作家さんを紹介してくれてありがとう!!
高柴