夢のカルテ

高柴です


高野和明さんと坂上仁志さんの共著、「夢のカルテ」を読みました。

夢のカルテ (角川文庫)

夢のカルテ (角川文庫)

高野さんといえば去年は「ジェノサイド」で一躍時の人になりましたね。私は「ジェノサイド」をさほど面白いとは思わなかったのですが、私と同じく「ジェノサイド」を気に入らなかった人にはぜひ「13階段」を読んでいただきたいなぁと思います。素晴らしいミステリだと思います。


さて、今回読んだ「夢のカルテ」のあらすじは
夢分析を得意とするカウンセラーの夢衣には誰にも言えない秘密があった。それは自分が他人の夢に自由に入り込めるということ。その能力でカウンセラーとして良い実績をあげていた夢衣のもとに不眠症の刑事麻生が現れる。麻生の不眠の原因は勤務中に狙撃され、しかも目の前で通行人の女性を殺されてしまったことにあった。彼の夢に入り込んだ夢衣は彼が無意識のうちに目撃していた犯人の顔を見る。
夢衣の協力によって無事に犯人は捕まるが、いつも間にか二人の間には恋愛感情が育っていた。夢衣はこの「恋」は本物なのだろうかと悩みつつも彼に惹かれていく。


というのが第一章で、夢衣が麻生の依頼やなりゆきで毎回いろんな人物の夢に入って事件の解決に貢献するという続きものの短編集。


なんかアッサリした話でした。共著だからなのか高野さんの「濃さ」がなかったように思います。夢を使った心理療法がひとつのテーマということで、ここはいつもの高野さんらしくしっかり勉強されているのは伝わってきました。高野さんはとにかくいつもしっかり勉強されているイメージ。心理療法ってかなり体系化されているんだなぁと驚きました。
しかしいつもの「ぐっとくる」かんじがなかったのは残念でした。高野さんは細かい伏線を丁寧に丁寧に張ってそれを鮮やかに回収するのが本当にお上手で私はいつもそこに惚れ惚れするのですが、今回はそういうことは一切なく、ストーリーも一応ラブストーリーが核のひとつなんですがハッキリ言ってたいして面白くもなく、いつもの細かいギャグもありませんでした。あの細かいギャグがいいのに!!


そんなわけでちょっと不完全燃焼でしたね。
あと、作品とは関係ないですが巻末で解説者が、高野作品のオススメを3つ挙げるとしたら10人が10人真っ先に「ジェノサイド」を挙げるだろうと書いていらっしゃったのがちょっと不快でした。ずっとファンでジェノサイドで心底ガッカリした人だっていますよそりゃ。9人って書いておけばいいのに。


ちなみに私なら迷わず「13階段」「幽霊人命救助隊」「6時間後に君は死ぬ(の中の“恋をしてはいけない日”“3時間後に僕は死ぬ”)」を挙げますね。あとは誰かにオススメしようとまでは思いません。逆に言うとこの3作品は自信を持ってオススメできます。どれも本当に素晴らしいと思います。




高柴