モダンタイムス

高柴です


伊坂幸太郎さんの「モダンタイムス」を読みました。
面白かったです!
伊坂作品に少し飽きてしまってしばらく距離を置いていたのですが、これは読んでよかった。

モダンタイムス(上) (講談社文庫)

モダンタイムス(上) (講談社文庫)

ちょっといつもと雰囲気が違う気がします。くどさがあんまりなく、疾走感がありました。いつもほど文章に癖がなかったようにも思います。くどさも癖も味のひとつなんで好きですが飽きるというのも事実。
さて、簡単にあらすじ
渡辺拓海はごく普通のシステムエンジニアでプロの恐妻家。どうプロなのかというと、妻の怖さが尋常ではないのだ。この「怖さ」は、生命の危機を感じるレベルの怖さであり、彼からしてみれば恐妻家を名乗る周囲の夫たちなど生ぬるいアマチュアである。
物語は渡辺の浮気を疑った妻が差し向けた男に渡辺が危うく爪をはがされそうになるところからスタートする。なんとかその場を切り抜けた渡辺は、翌日上司からある仕事を命じられる。その仕事は変人だが非常に有能な先輩五反田が任されていたが彼が失踪したのでその代打として渡辺と後輩の大石に回ってきたらしい。渡辺は、五反田の失踪を疑問に思うがその仕事に取り組むうちに五反田が残した謎のメッセージに気付く。
危険を感じつつも謎に惹かれる渡辺だったが、謎に関係すると思われるある単語の組み合わせを検索した大石や上司などまわりの人々に次々と悲劇が襲ったことで、その危険さを確信するようになる。
渡辺は真実を知ることを決意。たまたま同じ謎を追っていた友人作家の井坂からヒントをもらい、なんとか真相に近づこうとする。
そんな中、渡辺は五反田と再び連絡がつながり、同じく真相を追っていた五反田に頼まれて謎の中心にいると思われる政治家の永嶋に話を聞きに行くことになる。
真実とはなにか?知ることに意味はあるのか?
知ってもどうにもならぬ大きすぎる「真実」と「そういうことになっている」世の中の流れ。
だが、人生は小さなものごとの積み重ねこそが重要なのではないだろうか。


みたいな話。
人生は要約できない
というのがひとつのテーマだったんですが、それが丁寧に描かれていてよかったです。
ミステリとしてもゾクゾクして面白かったと思います。個人的にゴールデンスランバーより好みです。超能力でてきますけど、使い方もうまかったと思います。ぼかすところが伊坂さんらしいですね。


何より、「素直さ」を感じました。
正義とか、世の中の仕組みとか、個人ではどうにもならないことに対して
色々考えてみたけど、ほんとにどうにもならないね
という結論が潔くてすがすがしい。こういうのがたまらなく好きです。
考えずにわからないと言ってるのではなく、ここまで精一杯考えてみた、というところに作者の誠意を感じます。
まぁいろいろ言いましたけど、伊坂ファン・ミステリファンなら読んで損はないと思いますし、伊坂作品を読んだことのない人にもおすすめします。



高柴