永遠の出口

高柴です



森絵都さんの「永遠の出口」を読みました。最近、ちょっと森さんにハマっています。普段あまり読まないジャンルなのですが、なぜか手が伸びてしまう森絵都作品。今回も面白く読みました。

永遠の出口 (集英社文庫(日本))

永遠の出口 (集英社文庫(日本))

ヒロインの紀子はごくごく平凡でときどきとってもアホな女の子。でもそのアホさがたまらなく可愛い。
そんな彼女の小学4年生から高校3年生までの9年間にあったいろんな「事件」を描いた短編集であり、紀子の成長というひとつのテーマでゆるく繋がった長編でもある本書、小学校の高学年からスタートするっていうのが意外と斬新。小学だけとか中学だけとか高校だけというパターンはよくありますが、すべてを網羅って新鮮です。
小学4年っていうのがまた絶妙。女の子ってあのくらいから信じられないくらい性格悪くなりますよね(笑)自分のことですけど。今思い出すと当時の自分を埋めてやりたくなります。
紀子がぶつかる「事件」は小さなものから大きなもの、誰もが体験するものからそうでないもの、共感できるものできないもの本当にさまざま。でも、全部ひっくるめて紀子というか、ものすごくキャラの言動に説得力があるんです。最初のほう、小学生くらいの紀子を見守ってるときは
「あらあら紀子ちゃんったら」
みたいな近所のおばちゃん感覚なんですが、中学生のところを読んでるうちに
「ちょっとノリちゃん大丈夫?」
という親戚のおばちゃんの気持ちになり、高校に行くと
「あはは。紀子ったら相変わらずバカねぇ」
気分は姉。
どんどん紀子に近づきます。特別な魅力があるわけではないですし、自分に似ているわけでもすべてが共感できるわけでもないのに、沸き上がる親近感はどこからくるのだろう?

周りの少年少女たちの描き方もとても丁寧で、紀子のいる世界を無理なく広げていました。

と、まぁ大満足だったわけですがひとつだけ不満を言わせてもらうと
エピローグはいらない
かな。
不倫してましたーとか、けっこう苦労しましたーとか、別に聞きたくなかったな。エピローグの意図は理解できますが、もっと紀子のことを読者に任せてほしかったかもしれません。
蛇足とまでは言いませんが、読後ちょっと苦笑い。
でもそれまでは本当に面白かったです。特に女性にオススメかな。きっとどこか共感できる部分が見つかって懐かしい気持ちになれると思いますよ。





高柴