火天の城

高柴です


山本兼一さんの「火天の城」を読みました。
山本さんの作品を読むのは今回が初めて。

火天の城 (文春文庫)

火天の城 (文春文庫)

十分面白かったですが、テーマが良すぎるだけにちょっと物足りないかな?
ストーリーは、信長の専属大工である岡部又右衛門と以俊父子が超巨大プロジェクトの「安土城築城」に挑むという話。
壮麗な天守閣の先駆けであり、豪華絢爛だったと語り継がれる安土城。歴史に興味のある人なら一度は憧れるお城ですよね。たまに再現図とかを見かけますが、やはりお城は実物を見ないと話になりません。でも完璧に復元しても、きっとなんか違うんだろうな。作中で城は生きているという表現があるのですが、あれは比喩とかじゃなく本当だと思います。「信長」の安土城だからこそ息を呑むようなお城だったのではないかと。
安土城をいちから作っていく過程を描いたこの作品、城づくりというテーマに誠実に書かれているのにはとても好感が持てます。
石や木材についてかなりページをさいているのがうれしかったですね。普段あまり意識されませんが、400年以上前に高層建築を可能にするほどの木材を手に入れることの困難さと石垣作りのために膨大な量の石を必要としたというのは城を語るためには無視できぬところです。


安土城築城というプロジェクトに集まったのはそれぞれの道の一流の匠たち。そんな彼らの信頼を集め、ひとつにまとめあげるのが棟梁又右衛門。当時は棟梁がデザインや設計までやっていたんですね。スゴイ!
そんなわけで、又右衛門と息子の以俊が一応主役になるのですが、なんかしっくりこない。いろんな部門のプロを次々に出した結果、どの登場人物も深く書ききれていないような、そんな印象を受けました。石や木材などの職人だけならまだしも、宣教師や忍者まで出してくればそりゃそうなりますとも。ザワザワした印象が残り、いまいち主人公父子を理解しきれなかったのが残念です。
もう少し登場人物を絞って職人中心にしていれば、もっと話に重みというか安定感が出たかもしれないなぁとぼんやり思いました。
でもそうすると私は満足だけど話が地味になってしまうという…。


いろいろ書きましたが、楽しかったですし、お城に興味がわきました。お城好きには本当にオススメです。




高柴