空色バトン

高柴です


笹生陽子さんの「空色バトン」を読みました。あちこちで書評を見かけて気になったので。

空色バトン

空色バトン

短編集で、登場人物がまるでバトンをつないでいるようなイメージ。つないだバトンの行き先は…?
ストーリーは
しょうもないことを友達とワイワイ言って騒ぐのが好きな普通の高校3年生のセイヤは母ショーコを突然亡くす。母の通夜で母の幼馴染の女性3人組に声をかけられたことで、彼は地味な母親が中学時代友人たちと同人誌を作っていたことを知る。母の代わりに家事をこなしていくうちに、セイヤは少しずついろんなことに気付いていく…というところから始まり、次にショーコの同人誌仲間たちに主役のバトンはつながれていき、最後は仲間の娘が主人公。しっかり者の吉野の一人娘ミクが母の故郷へ引っ越してくる。そこで出会うのは?みたいな話。
よくわかんないですよね。まぁハッキリ言ってしまえばあまりストーリーはありません。これはそういうものを期待して読む本ではありません。ぼんやりした大切な「なにか」をその章の主人公たちがぼんやり悟っていくみたいなかんじです。ざっくり言うと青春ものになるのかな。
すべて一人称で書かれているので、それぞれの個性がよく出ていて面白いです。キャラの書き分けはすごく丁寧でお見事。特に「ぼくのパーマネントイエロー」は目立たないけど優しくて賢い男の子の雰囲気が良く出ていてとても好ましいお話でした。
「青の女王」は主人公の、周りをつまらない人たちだと切り捨て、自分は他とは違うんだと意識しているよくいるタイプの女の子っぽさが少しおかしくかわいらしく。「茜色図鑑」は、まさにこの本の中心的アイテムである同人誌を作っている最中のお話。ラストシーンが印象的で好きです。
テーマは「成長」かなぁ。みんなほんの少しだけ成長するのです。少しだけなので全然ドラマチックじゃないんですが、何と言えばいいのかな…小さくふっと腑に落ちる感覚があるんです。そこが爽やかで良かったです。
穏やかな作品が好きな方にオススメです。



高柴