ナイトホークス

高柴です


先日の「検屍官」とある意味好対照なのがマイクル・コナリーの「ナイトホークス」

ナイトホークス〈上〉 (扶桑社ミステリー)

ナイトホークス〈上〉 (扶桑社ミステリー)

およそ20年前の作品でかつどちらも超人気作家のデビュー作という点は似ていますが「検屍官」が意欲的に当時の最新の科学捜査を取り入れているのに対し「ナイトホークス」は一匹狼の刑事が頭と足を使って地道な調査で解決するという点で対照的といえます。
しかし20年という年月は変わらぬものを扱ったほうに優しかったようです。
主人公たちが公衆電話を愛用していることを除けば、ほとんど時代を感じさせません。
ストーリーは、
ベトナム帰りのロス市警刑事ハリーは天涯孤独の40男。彼は非常に優秀な刑事だったが、ある事件で丸腰の殺人犯を撃ち殺してしまい現在はハリウッド署に左遷されている。
そんなある日、死体発見の連絡を受けて現場に赴いた彼は、ベトナム時代の知人である被害者と対面する。麻薬の過剰摂取というありふれた事故死だという空気が仲間内で広まる中、ハリーは不審な点が多すぎると指摘し、強引に捜査を進める。
優秀な彼は、すぐにこの殺人事件が8ヶ月ほど前に起こった銀行強盗事件と関係があることに気付く。
うまくFBIを利用し、FBIの女性捜査官とコンビを組んで捜査を続けることになった彼は、まず死体があると通報してきた不良少年を探す。
徐々に明かされていく銀行強盗たちの本当の目的。完全犯罪になるはずがたったひとつのミスで少しずつ計画に狂いが生じていた。そのミスにただひとり気付いたハリーは、犯人たちの計画はまだ終わっていないことを知る。
ハリーの過去、魅力的なFBI捜査官との恋、ハリーを陥れようと画策する身内の刑事たち。まさしくハードボイルドの典型。典型だけどやっぱり面白い。


元兵士でロス市警刑事なんて、笑っちゃうくらいありふれていますよね。
でも、その中でこの「ナイトホークス」が注目を集め、評価されてきたというのはすごいことだと思います。実際、面白いんですよね。ハリーもかっこいいですし、話の流れも展開も伏線の回収も鮮やかです。
ただ、王道一直線ゆえにこういう話をよく読んでいるので、途中でオチがわかってしまって、少し気が重くなりました。まぁ予想よりはだいぶ読者に優しいラストだったので、ホッとしましたが。ハリーの主義というか美学みたいなものがとてもよかったです。
そんなわけで、王道を詰め込んでいるのにドキドキする「ナイトホークス」
私は好きです。とても面白く読みました。




高柴