検屍官

高柴です


パトリシア・コーンウェルの「検屍官」を読みました。

検屍官 (講談社文庫)

検屍官 (講談社文庫)

コーンウェル女史の作品を一度も読んだことがなかったので、試しに1冊読んでみようと思って手に取りました。
1990年に発表されたこの作品、20年前に読みたかったですね。
なぜなら、当時は最新技術だったDNA等の科学捜査が出てくるのですが、その有効性が現在と比べるともどかしいほど不完全なのです。
今では当たり前のことがまったく当たり前ではない。この20年というのは信じられないくらいの技術の進歩を経験した年月だったのだと改めて実感しました。
携帯電話も出てきませんし、コンピュータもお粗末な代物。
20年前だと、コンピュータのハッキングやDNA捜査というのはそれだけでも十分わくわくできただろうなと、当時の読者を羨ましく思います。今なんて逆に進歩しすぎてコンピュータやDNA云々について専門用語を羅列されると混乱してしまいますからね。
ストーリーは、検屍官の女性を主人公に、連続殺人事件を捜査するというもの。
こういう小説ではお約束ですが、怪しい人が次々と出てきてドキドキしました。主人公はさすが女性が書いただけあって女から見て完璧な女性。タフでクールで有能で聡明。でも女性らしい弱さもときどき顔をのぞかせてそれも魅力になっています。
伏線の張り方と回収の仕方もきっちり計算どおりというイメージで読者に不満を持たせるような隙はありません。ラストの犯人の顔を見るまで緊張感がありました。
そんなわけで、科学捜査の時代の変化による陳腐化さえ気にならなければ、ミステリとしては大変面白かったです。またコーンウェル女史の作品を読んでみたいと思いました。



高柴