疾風ガール

高柴です



お天気、荒れていますね。「3月の風と4月の雨が5月の花々をつれてくる」というイギリスのことわざがあります。どの本で見かけたのかは覚えていませんし、私が読んだ本では「5月の春を連れてくる」と訳してあったような気がするのですが、それはさておき、とても好きなことわざです。風と雨が春を連れてくるっていう表現が雄大でいいなぁと思うのです。
本当にどこで見たんだろう?秘密の花園だったような気もする…。ちなみに、有名児童書の女性作家は失礼な言い方をすればいわゆる「一発屋」が多い印象ですが、秘密の花園の作者バーネット女史は「小公子」や「小公女」も書いているスゴイ人です。
このことわざを知ってから、3月の初めごろに吹く春一番にとてもわくわくするようになりました。イギリスと日本では天候が違うから関係ないかもしれませんけど、なんとなく。春一番じゃなくても、強い風ってなんだか非日常な気がして好きです。家や建物の中にいるとき、もしくは帰り道限定でね(笑)


さて、無理やり風繋がりで本題。
前からちょっと気になっていた誉田哲也さんの「疾風ガール」を読みました。

疾風ガール (光文社文庫)

疾風ガール (光文社文庫)

「武士道シリーズ」が大好きなので、誉田さんは本屋さんでは素通りできない作家さんの一人なのですが、かなり期待して読んだ「ストロベリーナイト」がイマイチで、この「疾風ガール」もなんかミステリっぽい展開になりそうなあらすじだったので、躊躇していました。しかし「青春小説」という紹介文と、なにより「疾風ガール」というタイトルの清々しさに惹かれてやっぱり購入。
あらすじは
ロックバンドのギタリストの夏美は天才的な音楽センスに溢れた19歳の少女。そんな彼女の才能に惚れこんだ芸能事務所の社員、祐司は彼女をデビューさせたいと奮闘するが、肝心の夏美はバンドの活動に夢中で個人デビューにはあまり乗り気ではない。そんなある日、バンドのボーカリストの薫が突然自殺してしまう。彼を尊敬していた夏美はひどくショックを受けるが、彼に対する謎が浮かび上がる。そもそも彼の名乗っていた名前は本名ですらなかったのだ。
彼は一体何者なのか?
なぜ彼は自殺したのか?
夏美は祐司を従え、薫を知るために奔走する。
そして彼を知り、彼の死を自分なりに消化して、夏美は再びステージに立つ。



途中までは疾風でしたけど、途中からは突風というイメージ。ボーカリストの故郷を突き止めるところまでは、気持ち良い疾走感があったのですが、彼の自殺の原因あたりで急ブレーキをかけられ、ときどき吹く突風でラストまで連れていかれたような気がします。
ミステリでなかったのはよかったと思います。確かに「青春小説」でした。誉田さんの持ち味ともいえる「文章の軽さ」は絶好調。ストロベリーナイトみたいに中途半端に軽くてイライラさせられるよりは、こうやって突き抜けて軽い方がリズムよく読めるので好きです。
今回はロックということで、疎い私には「なんだかよくわかんないけどスゴイ」単語の連発でしたが、音楽が好きな人には楽しいかもしれません。続きもあるそうですが、迷うところです。何より作中で言われているほど夏美に魅力を感じないのが辛いです。とにかく魅力があるんだ!スゴイ才能があるんだ!と連呼されても、彼女がハッキリ見えてこなかったです。だから、これからの彼女にそこまで興味が持てないというのが正直な気持ちです。
というわけで、楽しく読めたけれど、そこまでハマれなかったというのが結論です。やはり私の中では誉田さんの作品では「武士道シリーズ」がぶっちぎりですね。





高柴