五年の梅

高柴です



近所の梅が満開です。
そこで思いだしたのが乙川優三郎さんの「五年の梅」
ちょうど1年前、乙川さんの作品にハマって2カ月くらい乙川さんばかり読んでいました。
「五年の梅」は山本周五郎賞受賞作です。
で、感想ですが・・・
うーん。読むときのテンションを選ぶかも。しみじみしたいときは良いのですが、スカっとするような話ではありません。

短編集で、表題の「五年の梅」は優しい一途な男の話です。最後はちょっとうるっとするかんじ。

でも意外と読んでいるときに面白かったのは「蟹」という話。何度も離縁され、そのたびに夫のランクが下がってとうとう家中でも嫁が来手がないような男に嫁ぐことになった女性が本当の「幸せ」を手に入れるまでを描いた作品。夫の不器用な愛情が微笑ましくて、彼に寄り添おうとする主人公が好ましい良作だと思います。


今数えたら乙川さんの本はちょうど10冊ありました。もっと読んだような気がしてたんですけど、意外と少なかったです。長編短編いろいろ読んで思ったのですが、乙川さんの作品って


・・・なんかうっすら暗い


ファンの方には本当に申し訳ないのですが、それが私の正直な感想です。
とはいえ、話はハッピーエンドがほとんどですし、出てくる登場人物も良い人が多いですし、人情物を得意とされているだけあって穏やかで優しいラストが多く感動します。
しかしなんとなく暗さが漂っているような気がして、なかなか手が伸びないのです。
なにより、人情物ということでどうしても比べる相手が山本周五郎氏と藤沢周平氏という超大物作家になってしまうのも不利です。山本氏の作品には穏やかな中にも力強さがあり、藤沢氏の作品には陽だまりのような優しさと感動があります。作風は似ているような気がしますが、やはりちょっと違うなぁと思います。生意気ですみません。



いろいろ書きましたが、買って損はしない乙川作品。時代モノがお好きでまだ読んだことがないという方にはとりあえず1冊読んでみることをオススメいたします。

五年の梅 (新潮文庫)

五年の梅 (新潮文庫)









高柴