饗宴 ソクラテス最後の事件
高柴です
先日、柳広司さんの話をしたときに気になるけど迷っていると言っていた「饗宴 ソクラテス最後の事件」を読みました。たまたま本屋さんに行ったとき、柳さんが「漱石先生の事件簿 猫の巻」の作者だということに気づき、この方はこういうパロディっぽい作品が得意なのかもしれないと思ったのでさっそく購入してみたのです。「漱石先生の事件簿」を読んだのはジョーカーゲームの前だったので、今まで全然気付かなかったです。作品の雰囲気もまったく違うし。
で、「饗宴」ですが…
面白かったです。
- 作者: 柳広司
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/01/30
- メディア: 文庫
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ミステリとしては、ちょっとツッコミどころがあったりもするのですが、唯一の「殺人事件」のトリックは序盤にきちんと伏線も張ってあり、気づかなかった自分にジタバタしました(笑)シンプルな良いトリックだったと思います。
でも、この話で一番大切なのは事件のトリックや殺害方法ではありません。大切なのは、ソクラテスのアテナイへの壮絶ともいえる「想い」だと思います。アテナイを愛し、アテナイ人であることを誰より誇りに思うからこそ、耳に優しいことなど言わず、アテナイに厳しい試練を課すことをいとわないソクラテス。このソクラテスの考え方やアテナイの状況を通して柳さんは現在の世界を痛烈に皮肉っているのでしょうね。読んでいて、アレ?古代ギリシャのはずなのに、なんか聞いたことある話がよく出てくるなぁと思いましたから。
今の世の中にソクラテスほど真剣に故郷を国を世界を愛してくれる人っているんだろうかと、ちょっと考えてしまいました。
そんなわけで、期待していたよりずっと面白かったです。
高柴