奥田英朗 「最悪」

高柴です



プロ野球のキャンプが始まりましたね。高柴はプロ野球ファンなので、シーズンオフは試合がなくてさみしいです。とりあえず、応援しているチームの選手たちがケガなくキャンプを終えられますように。オープン戦観にいきたいな…。

野球といえば、奥田英朗さんですよね。野球ファンとして有名です。今日読み終えたのが、その奥田さんの作品「最悪」です。

奥田さんの作品は好きです。エッセイも面白いし。でもこの本にはなかなか手がでませんでした。なんか話が暗そうだな…と思って。
で、実際読んでみたらやっぱり鬱々としてしまいました(笑)でも、奥田さんの文章って引き込まれるんですよね。だから、ああ嫌だな、気が重くなるなと思ってもやめられないんです。ある意味大迷惑な作家さんです。
さて、この「最悪」ですがお互い面識のない3人の登場人物たちがあれよあれよというまにそれぞれ大ピンチに陥り、やけくそで犯罪に突っ走ったら全員集合というお話です。
3人の運命がどんどん悪いほうに転がるので、本当に可哀想なのですが、3人ともどこか自業自得という部分もあって、それが怖いのです。普通の状態なら絶対しないであろうことも、この精神状態ならやっちゃうかもなと読者に思わせる展開の持っていき方はさすがだなーと思います。奥田さんはキレる人間を書くのが上手なイメージです(笑)ゾッとするキレ方じゃなくてどこかコミカルなキレ方なので読んでいて楽です。
結局、3人ともギリギリのところで「自分の中の最後の何か」を守ることができたので、救いのあるラストでした。
物語には「救い」があってほしい。というのが私の持論です。
それは、主人公が死ぬのが嫌とか幸せになれないのが嫌とかじゃなく、死ぬならどう死ぬのか、幸せを逃したとき絶望するのか前を向くのかが重要だということです。登場人物も読者も絶望のどん底に落として終了というのはあまりにもつらすぎます。
と、思う私は甘いんですかね〜。まぁ、だいたい粗筋チェックして買うのでめったに絶望的なラストの作品は読まないですけど。

そんなわけで、「最悪」は楽しく読める話ではないけれど、文章も展開もテンポがよく、ラストはちょこっと救いがある作品でした。

最悪 (講談社文庫)

最悪 (講談社文庫)

高柴