物語 スペインの歴史〜人物編

高柴です


岩根圀和さんの「物語 スペインの歴史〜人物編 エル・シドからガウディまで」を読みました。

先日岩根さんの「物語 スペインの歴史」を読んで面白かったので、こちらもさっそく購入。
期待しながら読んだんですが…岩根さんのファンになりました。
素晴らしい。こういう人がもっと本を出すべき!!面白いです。淡々と、歴史には忠実に。事実は小説より奇なりといいますが、本当にそうなんですよね。だから、歴史への愛も敬意もないよくわからんねつ造を詰めこまなくてもちゃんと物語になるんです。それをきちんと証明してくださっているのが岩根さん。
取り上げている人物はスペインの歴史に名を残す6人。
騎士エル・シド、女王フアナ、聖職者ラス・カサス、作家セルバンテス、画家ゴヤ、そして建築家ガウディ。
時代と立場ができるだけバラバラになるように選ばれた6人の人生を描くことで、当時のスペインの状況を伝えています。
エル・シドはかーなり美化された姿を本や演劇で見かけますが、実物はそんなんじゃないよ、とバッサリ。イイ!こういう、いや、そんなんじゃないしってバッサリ言っちゃう人大好き。でも普通に波乱万丈でめっちゃ強い人だったみたいで、楽しく読みました。
女王フアナは、悲劇の女王。実際のところはどうだったのかなーと考えながら読みました。
ラス・カサスには感動しました。ラス・カサスは、スペイン人のインディオたちに対する非道の数々を真っ向から批判した人物。インディオ支配を肯定する哲学者との論争は、まさに手に汗握る緊迫感がありました。あの臨場感はすごかった。当時、ちゃんとこういう発言ができたことに安心しました。当時のスペインはただの乱暴で野蛮な国だったわけじゃないんだな〜。
ゴヤは宮廷画家のイメージだったのですが、意外と危ない橋も渡ってたんだなぁとびっくり。狡猾な面もあったという作者の紹介も興味深かったです。
ガウディは、その悲惨な最期に驚きました。もっと、みんなから愛されて幸せにぬくぬく暮らしていたんだと思ってた。でも、彼のカタルーニャへの愛と篤い信仰心を知ることができてよかったです。
最後にセルバンテス。前回の物語スペインの歴史でも取り上げられていた人物で、あれ以上のドラマがあるの?と半信半疑で読んだんですが、面白かった。セルバンテスが58歳のときに近所で起こった殺人事件の記録から、当時のセルバンテスの様子を探ろうとしています。作者の好奇心と探究心、セルバンテスへの興味や愛情がよく伝わってきました。セルバンテスは自伝を書いてたら普通に売れっ子になってたんじゃないかな。あの人、人生いろいろありすぎ。


岩根さんのように探究心を持った方が歴史を描くと本当に面白いですね。土台がしっかりしているので、ものすごく安心して読むことができました。またこの方の本なら読んでみたいです。