コスモポリタンズ

高柴です


サマセット・モームの「コスモポリタンズ」の感想です。

コスモポリタンズ (ちくま文庫―モーム・コレクション)

コスモポリタンズ (ちくま文庫―モーム・コレクション)

いわゆるショート・ショートと呼ばれる形式の短編小説集。裏表紙の紹介文に「珠玉の小品30篇」と書いてありました。余談ですが私は「珠玉の」という言葉に滅法弱く、「珠玉の」と書いてあればよほど苦手な作家さんでない限りフラフラと手にとってしまいます。なんて単純な。しかしたいへん美しい言葉だと思うんです。
「珠玉」…うーん。響きも字もなんて綺麗。


作者の序文にモームの小説に対する姿勢がうかがえます。小説とは読者を楽しませるものでなければならないと。
読書は娯楽であってほしいというのが私の持論ですが、モームが読者を楽しませるために書いていたと知ってとても嬉しかったです。モームの作品を面白く読んでいるのはちゃんと作者の意に適っていたんだなと安心しました。


“この本の舞台はヨーロッパ、アジアの両大陸から南島、横浜、神戸まで――”
と、紹介文にありましたが、あまり異国情緒を期待してはいけません。なぜならこの短編集の主役は「私」が出会う「人」であり、場所はあまり関係ないからです。私は特に珍しい神戸にわくわくしていたのですが、期待はずれでした。
しかしお話としては満足でした。毎日少しずつ読むのに適していると思います。
よくこれだけいろんな話を思いつくなぁと驚きました。雰囲気も温度も毎回違うので結末が読めないのです。今回は悲しく終わるのかほっこりするのか皮肉っぽいオチなのか…。ある意味ドキドキします。
私が特に好きなのは「物識先生」です。ラスト2行が秀逸。立ち読みされる方はぜひ「物識先生」を読んでみてください。
「珠玉の」という言葉に恥じぬ短編集だと思います。旅行に持っていきたいですね。何度も読み返してじわじわ楽しみたい、そんな作品でした。




高柴